『挑戦者たち』(☆3.5)  著者:法月綸太郎

イメージ 1

まずはあらすじ。

賢明すぎる読者諸君に告ぐ――これは伝説のミステリ奇書である。

 こんな本、ありか!? パロディありクイズあり迷路あり。レーモン・クノーに触発されて、古今東西の名作のエッセンスに彩られたミステリ万華鏡。ブッキッシュで過剰な仕掛けと洒脱な文体遊戯でマニア悶絶。「さて、この本の面白さが諸君にわかるかな――」。
 博覧強記のミステリ作家が放つ、これが究極の「読者への挑戦状」だ!


Amazon紹介より

 のりりんの新作だ。ブロガー仲間の中では、のりりんファンとしては多分上位に来ると思う自分。作品としてはあれな時もあるのだけれども、静かなる熱量(苦悩?)を個人的には愛してる。
 で今回の作品を読み始めると、、、
 
 お、おお??????
 なんじゃこりゃ????????

 全編読者への挑戦状。そう、「必要な情報は全て出揃いました」のアレだ。ミステリファンの心を躍らせ、にも関わらずその挑戦を真っ向から受けて立つ人の少なさ(多分。。。)も際立つあれだ。たとえ小説を読まなくても、それこそ古畑任三郎のクライマックス前の独り語りでドキドキした人は少なくないはずだ。あれもいってしまえば読者への挑戦状の変化球だ。

 ブログ仲間のbeckさんも自分の読書歴に触れていたので、私も触れてみる。はっきりと読者への挑戦状として憶えている作品は小学校の教室に置いてあったジュニア版の「エジプト十字架の謎」だ。”読者への挑戦状”イコールと言っても差し支えない、巨匠エラリー・クイーンの中でも一度読んだら絶対に忘れないであろう◯◯◯◯◯◯(小屋の中にあったアレ)で有名な作品だ。ジュニア版とはいえ、所詮読むのは小学生。それまでの死体の謎でクラクラしていた頭では到底解けるはずもなく、ただただ感心するのみだった記憶がある。
 
 その後の国名シリーズを読むまではしばらく間が空いた(多分次に国名シリーズを読んだのは大学生の時のような気がする)が、その間にも島田荘司の『占星術殺人事件』だったり、高木彬光の「人形はなぜ殺される」だったり、有栖川有栖の江神さんシリーズだったりで触れてきた。おっと、なんだかbeckさんの振り返りと同じ作品ばかりになった。やっぱり名作&読者への挑戦状というのは意外と限られてくるのかもしれない。
 それはともかく、少なくとも長編では、推理の一部が掠る事はあっても完全に読者への挑戦状に答えられた記憶は無い。ただし、挑戦状が無かった(多分)作品できちんとすべての謎が解けたと自負出来るのは綾辻行人の「水車館の殺人」だったりする。あれは、最初から意気込み満点でメモを取りつつ読んでたから、出来たのだと思う。
 正直、先日40になった自分ではその体力は無く、ただ読者への挑戦状にワクワクするだけである。

 事件の経過も何もかも書かれていない。レーモン・クノーの「文体練習」に触発され、ひたすらに「読者への挑戦状」を紡ぎ出すこと99編。様々な挑戦状の文体模写(といってもかなりの数の元ネタがわからないんですが^^;;;)があったかと思えば、もはやパロディの域を越えて文章なのかどうなのかすら不明なものまであったりして、よくもまぁこれだけの事をやったな、と感心する。

 正直最初読み始めたときは、「う~~~~ん、これは☆2つ付けないかも」と思うぐらい、首を捻った。ただ読み進めていくうちに、挑戦状の内容が直球から変化球を通り越して魔球になってしまうぐらい暴走(?)し始めると、読者への挑戦状自体が一つの生き物として魅力を発揮する、完全にスルメ文学だ。
 まったくもって薦めにくい、人によっては壁本になるんじゃねぇか、というぐらい遊び心に溢れた小説・・・?エッセイ・・・・?・・・・いや挑戦状だ。年末のランキング本で同評価されるかちょっと楽しみかもしれない。でも正直、2200円という価格設定も挑戦状だなぁ、とちょっと思ってしまった。。。。

 最後に。beckさんの記事によると、初版にはプレミアム挑戦状がついているらしい。ちなみに僕の購入したのは2刷。ううむ、残念。。。。




採点  ☆3.5