『祈りの幕が下りる時』(☆4.0)  著者:東野圭吾

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まずはあらすじ。

悲劇なんかじゃない。これが私の人生。
加賀恭一郎は、なぜ「新参者」になったのか---。

明治座に幼馴染みの演出家を訪ねた女性が遺体で発見された。捜査を担当する松宮は近くで発見された焼死体との関連を疑い、その遺品に日本橋を囲む12の橋の名が書き込まれていることに加賀恭一郎は激しく動揺する。それは孤独死した彼の母に繋がっていた。

シリーズ最大の謎が決着する。
吉川英治文学賞受賞作。


Amazon紹介より

 東野さんも読むの久しぶりだな~。この本も出た頃にハードカバーで買って積ん読になったままだったし、もう文庫が出ちゃったし。ううむ、ちょっと損した気分。

 でもって加賀さんです。一時期はもうガリレオ福山雅治”先生にシリーズ探偵の座を奪われたような感じもありましたけど、加賀”阿部寛”恭一郎のお陰でまたその地位を取り戻しつつあるような。昔からの東野ファンの人は、やっぱりシリーズ探偵は加賀さんが一番だよ~という人も多いじゃないですかね~。私もその一人ですが。

 今回は東京で起きた2つの殺人事件と、スターダムにいま登ろうとしてる演出家の過去を巡る話。そこにかつて加賀を捨て行方知れずになっていた母(そんな設定忘れてました^^;;;)の物語が絡んできて、複雑な展開になっていきます。ある程度犯人はバレバレな展開で、謎の中心はある死体の身元の割り出しと、被害者と犯人を繋ぐミッシングリンクとなってます。結構複雑な展開なので、こんがらがりそうにはなりましたが、そこが繋がってくると犯行に隠された動機も明らかになってくる訳で・・・。

以下途中までややネタバレ気味???????







 う~む、全然違うストーリーだし、動機もシュチュエーションも全然違うのですが、読んでてガリレオ先生の『聖女の救済』を思い出しました。設定的にむしろ『容疑者xの献身』の方が近いのかも知れないですけど、業を背負いながら、忘れること無くただ突き進んでいくヒロインの姿に何となく被るものを感じたのかなぁ。『容疑者x~』ばりに身勝手な動機でもある殺人ですけど、大切なものを守るためにその道を選択せざるを得なかった姿は『容疑者x~』のそれよりも、納得してまう部分があったし、最後の手紙の部分も含めてグッと来るところも多かった。







もうネタバレは大丈夫??????


 全体としては加賀に纏わる過去が明らかになる点も含めて、シリーズとしての一つの到達点だと思うし、東野作品としてもこの傾向の作品だとかなり上位には来ると思います。
 ただ、なんでしょう、この作品はそうでもないですが、少し前から東野さんのこの系統の作品を読んでると、少しずつ時代的な感覚の微妙な古さというか、伝え方や登場人物のキャラ設定やその思考経緯、感情が現代の感覚からすると浮世離れしてきてるんじゃないかと感じることが多くなっていた気がします。変な例えですが、たとえば、かつて国民的作家と言われ間違いなく一時代を築いた赤川次郎さんもまた、少しずつ登場人物の考え方と現実の人の考え方にズレが出てきてじょじょに読まなくなったのと同じ空気を感じました。

 そうはいっても、この作品に関していえばどうして登場人物がそういう行動を取ったのか、という部分も含めてきちんと作り上げてるな~という意味で、すごく良く出来てるのではと思います。時代のトップランナーである事はものすごく大変だと思うのですが、まだまだ頑張ってほしいですね~~~。


 それにしても加賀は今後どうなっていくんでしょうね~、登場人物の一人といい雰囲気になってるしな~。でも個人的には『眠りの森』の人がなぁ~・・・(モヤモヤ)
 




 



採点  ☆4.0