『カサブランカ』 監督:マイケル・カーティス

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あらすじ

 そこは自由を求める人々、最後の拠り所。運命が交差する場所。ナチスに追われるレジスタンスの指導者ラズロ(ポール・ヘンリード)は、カサブランカを経営するリック(ハンフリー・ボガート)を頼って店に現れる。
 リックはシニカルな性格のアメリカ人で、他人の面倒ごとには首を突っ込みたがらない。ましてや、ビクターの妻がかつて彼が愛してやまなかった女性イルザ(イングリッド・バーグマン)であるなら、なおのことだった。苦悩するイルザは、自らの身と引き換えにラズロを亡命させてくれるよう懇願する。愛する女性と多くの命への責任を背負い、重大な選択を迫られるリック - 運命の時は刻一刻と近づいていた…。

リック・ブレイン:ハンフリー・ボガート
イルザ・ラント:イングリッド・バーグマン
ヴィクトル・ラズロ:ポール・ヘンリード
ルノー署長:クロード・レインズ
シュトラッサー少佐:コンラート・ファイト
フェラーリシドニー・グリーンストリート
ウーガーテ:ピーター・ローレ
サム:ドーリー・ウィルソン


 今回『カサブランカ』を見るキッカケになったのは、広島の映画興行会社「序破急」が企画した「ワーナー・ブラザース MGM映画 クラシックス特集」で取り上げられたから。
 昔は市内中心部にも沢山映画館がありましたが、今は序破急系列の3館5スクリーンだけ(少し外れたところにはミニシアター、郊外にはシネコンもありますが)。そのうちの一つシネツインも、入居ビルの老朽化の為、この秋に閉館が決まってます。映画ファンとしては寂しい限り。

 それはともかく、広島の福屋百貨店にある「八丁座」で一週間上映の初日。往年の名作ということもあり、座席の7割は埋まっていたと思います。
 今回はデジタル・リマスターで1.33:1のほぼ正方形サイズ。なんだかスクリーンでこのサイズの映画を見るのは懐かしい。でもなんだか画面の中に世界が凝縮されてる感じがして、結構良かったです。デジタル・リマスターということもあり、昔の映画なのに驚くほど綺麗でした。

 物語の舞台は第二次世界大戦中のフランス領モロッコカサブランカ。当時はナチスドイツによるフランス侵攻によりパリが陥落。その中で戦火を避けアメリカへ渡るための迂回路の拠点がこのカサブランカなんだそうです。ただし、カサブランカから最後の経由地となるポルトガルへ渡る為の飛行機は数も限られ、植民地警察の通行許可書も必要。フランス領であるカサブランカでもナチス・ドイツの圧力が強まってきます。
 その中でアメリカ資本の映画といえ、反ナチズム(とはいっても映画の中で明確には触れていませんが)的な表現もあったりします。特にリックが経営するバーでナチスドイツの軍人が国家(?)を熱唱する中、フランス本土から亡命の為滞在していたフランス人達が国家「ラ・マルセイエーズ」でその歌を掻き消す場面なんかは、純日本人の僕でもぐっと来るものが有りました。
 ただ、その部分を監督自身が描きたかったのかというと、また別のような気がします。映画の挿入歌的に劇中何度も歌われる「As time goes by」に象徴されるように、やっぱりこの映画は恋愛映画なんだと。
 二人の男性の間を揺れ動くイルザが出す答えはいったいどういうものなのか。クライマックスの飛行場から余韻たっぷりのエンディングは本当に名シーンだと思います。


 主演のイングリッド・バーグマン、うーん、綺麗だなぁ〜。ただ綺麗じゃなくて、脆さと強さを併せ持った表情というか、二人の男性、そして時代に翻弄された女性の揺らめきをすごく出してるなぁ。というよりも、普通に演じたら、ただの嫌な女か悪女かになりそうなキャラです。

 そして、ボギーことハンフリー・ボガード。同時代のアメリカを代表する俳優。その顔はいかにも当時の二枚目でいま見てカッコイイかというと何とも困る。私が男性だからなのかなぁ。でも「ローマの休日」のグレゴリー・ペックは今でも通じる二枚目のような気がするし、ううむ。でも、この映画の中に登場する数々の名セリフ。これはもうこの人じゃないと、ほんと気障ったらしいだけで、名セリフとしては残ってないと思うのです。
 ただ、この名セリフ、日本語訳が素晴らしいのか、向こうでも名セリフなのかが不明です。もし訳が名訳だったのなら、それは日本に生まれて幸運だったわけで。ということで、今回印象に残った名セリフを紹介。

・Here’s looking at you kid.(君の瞳に乾杯)

・Where were you last night? ( 昨日なにしてたの?)
 That’s so long ago. I don’t remember. (そんな昔のこと覚えていないね。)
 Will I see you tonight? (今夜会える?)
 I never make plants that for ahead. (そんな先のことはわからないよ。)

・it. Maybe not today. Maybe not tomorrow, but soon and for the rest of your  
life.(それは今日じゃ無いかもしれない。明日じゃ無いかもしれない。でも一生後悔することになる。)


 もう、翻訳だけ見るとほんとまぁ歯の浮くような台詞ばかりですが、ボギーがその台詞というともう、カッコ良すぎです(笑)。特に最後のセリフはそのシチュエーションもあって、感動です。

 制作経緯によると、撮影開始時には脚本はまだ完成せず、クライマックスでイルザがどちらかを選ぶかも決まっていないという、中々に大変な状況だったようですが、もしかしたらそういった部分も、この映画にはいい影響を与えてるかもしれません。

 なにしろ昔の映画なので、シンプルな構成で奇をてらったものはありませんが、いい映画は時代を経てもいい映画なんだな〜、と改めて思いました。