『CUT~ 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』(☆3.0) 著者:内藤了

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まずはあらすじ。

廃屋で見つかった5人の女性の死体。そのどれもが身体の一部を切り取られ、激しく損壊していた。被害者の身元を調べた八王子西署の藤堂比奈子は、彼女たちが若くて色白でストーカーに悩んでいたことを突き止める。犯人は変質的なつきまとい男か?そんな時、比奈子にストーカー被害を相談していた女性が連れ去られた。行方を追う比奈子の前に現れた意外な犯人と衝撃の動機とは!?新しいタイプの警察小説、第2弾!

Amazon用あらすじより

 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子シリーズ第2段。前作の登場人物が今作でも重要な役割を果たしてるし、一作目のネタバレもあるので、もし読むならちゃんと最初から読むほうがいいです。
 
 『ON~猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』の時は、その内容以前に文章の読みづらさが個人的にネックでした。でもAmazonのレビューなんか見ると文章が上手いっていう人が多いんですよね~、この辺は好みなのかなぁ。
 それはともかく、2作目になって1作目ほど読みにくさは感じなくなりました。相変わらず台詞部分は、オシャレ(会話風?)に書こう(?)として滑ってる所があったり、三人称単視点の次の文章にアダ名が使われてる微妙な違和感はあったりするけれど、それでも前作ほどでは無い気がします。文章力が上がったのか、こちらが慣れたのかはわかりませんが。

 事件は体の一部が切り取られた遺体が複数発見されるという猟奇的なもの。そりゃあタイトルに猟奇が入ってるんだから当然でしょう。でも、割りと淡白系の文章なのでそこまでグロく感じないです。ただ、実際にこれが目の前にあったら、前作同様嘔吐担当の東海林刑事と同じような醜態を晒す自信があります。特にリアル蟲系はねえ^^;;
 一方で、わりとノホホンとした描写もあったりとして、緩急はしっかりある気がします。ただもう少しメインのストーリーとの絡みがあってもいいかもしれない。ただ前作から続く、七味唐辛子のくだりは本当にいるんだろうか、というぐらい全く活きてませんけど(笑)。

 ミステリとしては、なかなか被害者と容疑者が浮かび上がらない、被害者を結ぶミッシング・リンクを探す過程の中で、きちんと伏線を張っていて猟奇殺人だけのインパクトだけでは無い魅力があると思います。
 特に犯人に関しては、完全には無理かもしれないけれども、作中の情報だけで特定できるとは思いますし、そのへんのバランスは前作より上がってます。
 ただし、前作同様余りにも捻りが無い描き方だし、動機や犯人の目的も含めて、意外性はありません。なので、読み慣れてる人には早々と真相が分かって、警察の動きがもどかしく感じる可能性大ですが^^;;
 
 前作よりはかなり読みやすくなってるし、2作目にしてやっとサブタイトルの猟奇犯罪捜査班が設定として出てきたので、次も読んでみようと思います。ただ、万人に薦められる完成度かというとなんともいえません^^;;

 あと、サブタイトルに意味が見えてきたのに対し、新しいタイプの警察ミステリという謳い文句に関してはまったくよく分かりません。いやむしろそこに関しては前作より後退しているような気がするし、止めたほうがいいんじゃないか、と思ったり。
 そして、参考文献に平山夢明の『異常快楽殺人』があったりするのが、なんとなくらしくて微笑ましかった(笑)。
 
 あと、どうでもいいですが、ドラマ版では波留さん演じる主人公同様、関ジャニ∞横山裕さん演じる東海林刑事も全然キャラが違います。ドラマ版では過去にトラウマを持つ孤高の一匹狼という正反対のキャラとなっとります。確かにドラマでこのキャラ設定はないでしょう(笑)。



採点  ☆3.0