『残穢~住んではいけない部屋~』 監督:中村義洋

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あらすじ

 小説家である「私」(竹内結子)のもとに、女子大生の久保さん(橋本愛)という読者から、一通の手紙が届く。
 「今住んでいる部屋で、奇妙な音がするんです」
 好奇心を抑えられず、調査を開始する「私」と久保さん。すると、そのマンションの過去の住人たちが、引越し先で、自殺や心中、殺人など、数々の事件を引き起こしていた事実が浮かび上がる。彼らはなぜ、音のするその「部屋」ではなく、別々の「場所」で、不幸な結末をたどったのか。
 「私」と久保さんは、作家の平岡芳明(佐々木蔵之助)、心霊マニアの青年・三澤徹夫(坂口健太郎)、そして「私」の夫・直人(滝藤賢一)らの協力を得て、ついに数十年の時を経た、壮大なる戦慄の真相に辿り着く。だがそれは、新たならる事件の序章に過ぎなかった。

 	
スタッフ

監督
中村義洋

 
キャスト

竹内結子
橋本愛
佐々木蔵之助
坂口健太郎
滝藤賢一



 またしてもホラー映画。監督は中村義洋。『アヒルと鴨とコインロッカー』『ちょんまげぷりん』は好きだったし、サスペンス系では『白ゆき姫殺人事件』も面白かったので、原作付きの映画化の良品も多く、個人的には信頼している監督。竹内結子も『リング』の時から好きだったりします。

 映画は怪談ライター(?)である「私」のナレーションで進んでいく、ドキュメンタリー風。字幕の入り方や登場人物の語り口といい、宮部みゆき大林宣彦の傑作映画『理由』を彷彿とさせる。そこに被さってくる竹内結子のモノローグ、声質といい抑揚のリズムといい、作品の世界観にマッチしてました。

 久保さんから届いた手紙を発端に徐々に明らかになってくるマンションの怪奇現象。誰もいない和室から聞こえる服を引きずる音。誰かがいるような気配・・。「私」のアドバイスを受けながらマンション周辺の聞き込みを行う久保さん。そこから分かってくるエピソードがまたなんとも恐ろしげ、というより気味が悪い。謎のイタズラ電話に悩まされる久保さんの隣人。何もない空間を見上げながら「ブランコ」とつぶやく幼い女の子が再現したそれは、首に紐を結びつけてぶらぶらと揺れるぬいぐるみ・・・。どうみてもおかしい現象に、久保さんはマンションが事故物件ではないかと疑うが、不動産屋からはそんな事はないと説明される。

 このエピソードの掘り起こしは、久保さんが住人たちに聞き込みんだり、あるいは逆に彼らから教えられた事を「私」がセミフィクション小説のような語り口で紹介されていくので、まるで百物語のようだ。明らかに作品としては『リング』以降のJホラーの主流となったある種の直接的に迫ってくる恐怖とは少し違う、じわじわとくる気味悪さであり、怪談的なのである。

 未読であるものの、原作(小野不由美)も怪談的な構成(雰囲気?)みたいなおので、やはりこれは狙って表現している世界観でしょうなぁ。特に前半は、日本的な不気味な怖さ、いないはずの場所に誰かがいる(ような気がする)みたいなじわじわと侵食してくるような怖さが好きな人には楽しめると思うし、逆に『リング』や『呪怨』的なものを期待していると、完全に肩透かしな気分になると思います。
 そんな怪談的な作風の一方で、マンションの聞き込みにより建物が立つ前にその敷地でおこった事件、あるいはそこに住んでいた人が起こした事件が明らかになっていく手法はミステリー的な要素も感じさせてくれました。実際に久保さんは大学のミステリサークルに所属してる設定だし。

 ただ映画が後半に入っていき、少しづつ「何か」に侵食されていく登場人物達の日常のゆがみ、一連の怪奇現象の遠因が明らかになっていくにつれて、少しづつJホラー的な要素も強くなっていく。特に物語のキーワードとなる「話しても祟られる、聞いても祟られる」というフレーズは、結末の曖昧さ(あるいは最後まで語られない)によってもたらされる恐怖等よりも、『呪怨』シリーズに代表されるような何をしてもどうしても巻き込まれてしまう恐怖を感じさせてくれるし、『リング』の呪いのビデオテープのような無作為の恐怖の拡大にも繋がっていると思う。

 作品全体としては狙って怖がらせようとしていないと思うし、むしろ淡々と物語を進めることで、何を感じるかを観客の想像力に委ねている映画だと思う。最近は微妙な映画が多かったJホラーの中では、久しぶりに面白いと思った作品だし、いい意味で最後までなんだか嫌な気分にさせてくれました(笑)
 ちなみに鑑賞後Amazonのレビューを読んでいると、作中のある部分における違和感(というよりもその部分の表現手法が、他の場面の手法と明らかに違う)を指摘し、そこから物語の解釈に結びつけているコメントがあったのですが、なるほどそう解釈することによってさらに筋が通るのかもな~と思ったので、もし作品を見る機会があったら、鑑賞後にでも読んでみたらいいかもしれません。

 最後に、ゆきあやさん、これなら日本のホラーが苦手なあなたでも大丈夫!!・・・なはず。。。