『ナイチンゲールの沈黙』(☆3.8)



まずはあらすじ。

東城大学医学部付属病院・小児科病棟に勤務する浜田小夜。担当は、眼球に発生する癌―網膜芽腫(レティノブラストーマ)の子供たち。
眼球を摘出されてしまう彼らの運命に心を痛めた小夜は、子供たちのメンタルサポートを不定愁訴外来・田口公平に依頼する。
その渦中に、患児の父親が殺され、警察庁から派遣された加納警視正は院内捜査を開始する。
小児科病棟や救急センターのスタッフ、大量吐血で緊急入院した伝説の歌姫、そこに厚生労働省の変人・白鳥圭輔も加わり、事件は思いもかけない展開を見せていく…。

yahoo紹介より

さてさて、なんといってよいのか・・・

デビュー作『チーム・バチスタの栄光』が予想以上に面白かったということで、図書館に予約、読み終わりました。
チーム・バチスタ~』はオーソドックスな医療ミステリとして非常に纏まる中で、エンタメとのバランスも取れていましたが、シリーズ2作目にして一気にそのバランスが破綻(笑)。
ミステリとしての完成度は恐ろしく下がりましたな^^;;
前作が本格寄りで、今回はサスペンス寄り・・・という見方が出来なくもないのですが、クライマックスの容疑者のとの対決の部分、もうある程度犯人が見えてるだけに、もう少し緊張感が欲しかったな~。盛り上がり部分では隠蔽工作の過程の心理描写のぎこちなさがありました。さすがにこの犯人像には無理があったのかもしれません。
まあ、ある意味かなり突発的な部分もあった事件だから、犯人の行動の杜撰さもやむを得ずというところでしょうか・・・

それに事件の真相を突き止める上で運用された最先端技術が現実離れという言葉を超越したような代物。
いつからこの小説はパラレル・ワールドになったのというぐらいスゲー。
科学に裏打ちされたプロファイリングといいましょうか、こんなシステムがあったら犯罪の検挙率も上がりますな~。
事件の証拠としてもかなり有力な扱われ方をしてるし、このへんがスルーできなかったらつらいかもしれないっすね。。

あとは登場人物のキャラにも一言。
といってもおそらく皆さんがおっしゃってることだとは思うのですが、内山聖美のキャラがステレオタイプすぎてつらい^^;;
ある意味リアリストっちゃリアリストなのかもしれませんが、ここまでの人はいなくないっすか。
それでもうま~く使いこなせてればいいのですが、結局ステレオタイプなだけで終わってしまいますしね~。
そしてなんといっても白鳥が・・・。
この事件、彼じゃなくてもいいしほとんど捨てキャラになってるし。
これは前作のファンにとっては肩透かしなのでは。

で、結局つまらなかったかというと・・・私は正直いって好きです^^;;
もしかしたら、前作より好きかも。
だって、こんな話の展開に弱いんですもん(私の読書傾向をご存知の方は納得できるのでは)。
この物語に登場する伝説の歌姫、冴子。
そして舞台となる病院の看護士ながら、冴子を凌駕する才能の持ち主である小夜。
この二人が生み出す唄の奇跡。
そんな二人の背景にあるもの、そしてその才能ゆえに運命に翻弄されてしまう。
ファンタジーといったらそれまでだし、医療ミステリとしての骨格を持ってる作品としてはこういった世界観を導入するのは珍しいのでは。
ただ彼らの能力が物語の中(ミステリの中ではなく)できちんと生きてきているので、これはこれでありと思いました。
それでも一番ぐっときたところは白血病の少女由紀と端人の交流だったりするのがなんですが^^;;



採点  ☆3.8