『双面獣事件』(☆3.0)



まずはあらすじ。

人間を目から発する光線で焼き殺し、口から吐く黄色い息で肌を爛れさせ窒息死させる二つのゴリラのような顔と四本の腕を持つ"双面獣"。
この醜悪なる化物は次々と殺戮事件を引き起こし、奄美の人々を恐怖へと陥れた。魔獣誕生の秘密とは?殺戮事件の全貌とは?
名探偵・二階堂蘭子の謎解きの冒険が始まる。だが彼女を待ち受けていたのは、魔獣を超えた真の悪魔であった―。

yahoo紹介より

「新刊が一番待ち遠しい作家」が法月さんなら、「新刊が一番待ち遠しいシリーズ」はもしかしたらこの蘭子シリーズかもしれません。
本格としてはやや腰砕けのことも多々ありますが、それでもこのシリーズが持つ、古臭くも懐かしいドロドロ感が好きなんですよ。
蘭子のキャラクターも好きだし、事件の無駄に大袈裟なところも趣味だなあ~。

この作品は蘭子の宿敵となったラビリンスのとの戦いを描いた長編第2弾(短編集を含めると3作目)。
前作『魔術王事件』や他の作品でも触れられていた「双面獣」との戦いが描かれています。
しかし、この本はよもさんの記事しか見たこと無いんですが。みなさん蘭子は苦手なのかな~

で、感想は・・・
いやあ・・・途中まではすごく好きだったんだけどな~。。。
世界最長ミステリ『人狼城』に続き、おそらくミステリ至上最も被害者を出した作品じゃないですか、これ。
なにしろラビリンス&双面獣の被害者の数が総勢100名を超えてますから(笑)。
あっ、でもこれってそもそもミステリなのか?^^;


とにかく双面獣強ぇ(笑)。
あらすじにも書かれた強烈な風貌と怪光線と黄色い息でいろんなところで人々をバッタバッタと殺しまくります。
怪光線や黄色い息は想像ついたんですが・・・・まさか双面獣がほんとにいるとは^^;;;
さすが乱歩の人間豹を目指しただけはありますな。
まあノリがノリなシリーズなので、ああそっかと思いましたが、島田さんみたいに実は・・・っていうのに少しは期待してたんですけどね(笑)。

それはともかく、この荒唐無稽さがたまらない。
回想or独白シーンでは似たような殺戮場面ばかりだけれども、ここにいったいどんな本格のキーワードが隠されているのか・・と思いつつ読んでましたが・・・
めだたねぇ。
蘭子も目立たなきゃ、ラビリンスもめだたねぇ。
ラビリンスの隠された出生の秘密など、いくつかの謎が明らかになるものの、双面獣のインパクトには勝てません。
とにかくそこを堪能してください。

逆に言えば本格としての楽しみはむちゃくちゃ弱いですから。
蘭子にしても、相手は魔獣ですからお得意の推理をほとんど必要とされません。
たまに披露してもチープというかなんというか。。。
なんだか、会う人会う人を相手にホームズの如き個人情報を言い当てる技を披露して終わっただけというのが。。。
シリーズだから仕方ないのかもしれないけれど、ラビリンス相手にも後手を踏みまくるし。
特にクライマックスの場面、「罠だった」はないだろうと。。。
う~ん、蘭子ってほんとに名探偵か???(笑)

それでも最後にビシッと冒険譚っぽい終わり方をしてくれればいいんですが、そこもねぇ。。。
せっかく名探偵対魔獣という予想不可能な戦いだったのに、すごく腰砕けにおわってしまって。。
そこが決まれば☆3つ後半はあげたのになあ。。

よもさん曰く「ものすごいイマイチ感」に私も一票です。



採点  ☆3.0



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