『毒草師』(☆3.7)



まずはあらすじ。

鬼田山家の先々代当主・俊春が撲殺した、一つ目の子山羊。以来、この家では「一つ目の鬼を見た」と言い残し、内側から鍵をかけて離れに閉じ籠る人間が相次ぐ。
そして誰もが、そこから忽然と姿を消してしまうのだ。密室からの失踪事件として警察が動き始めたある夜、鬼田山家の長男・柊也が、自室で何者かに毒殺される。
しかも、その場にはダイイング・メッセージが残されていた。捜査が暗礁に乗り上げた時、関係者全員の前に、突然、御名形史紋という"毒草師"を名乗る男が現れた。
彼は一連の事件を『伊勢物語』になぞらえ、事件はほぼ100%解決したと言い放つが…。忌まわしき家伝の秘密が暴かれた時、新たな殺人が始まる―。
「QED」シリーズ随一の傲岸不遜な男・御名形史紋が難事件に挑む。

yahoo紹介より

はい、本家『Q.E.D』シリーズが苦手な私でございますが、今月発売された新刊が気になって読んでみました。
あの御名形史紋が主役なんて、いったいどうなるの?と思ったのですが・・・

最近の本家よりは面白かったんじゃないかな~。
ミステリ的な部分ではかな~~~~り強引なところもあるけれど、まあそこはそこ。
本家も事件は添え物だしな~、それよりはまだ事件してる気がするぞ(笑)
探偵としての御名形はまあ天才型というか直感型というか・・これだけの証拠でよくぞ真相にってな感じです。
密室トリックなんか、ある程度想像ついてもぜって~ここまでいろんなものを特定できんと思うぞ。
真犯人の正体も強引だし、そもそも叙述として破綻しとるぞ^^;;

結局どこまで業平が関わってるのかという、意外にそうでもなくて。
とりあえず枠組みだけを借りてきて、ヒント的な扱いにしてるのが読み易い理由?
本家ほど薀蓄がうるさくなかったしな~。
普通の人は西田君の知識にすら及ばないとはず。でもそれなりに面白いし、読み終わったらその辺の時代に興味が湧くんじゃなかなあ。
逆にこれまでの薀蓄を楽しんだ人は、「見えない人」や「タタラ」ネタが本編に引き続いて登場してるので、またか・・・という気分になるかも。
これからも「タタラ」はひっぱってんくんだろうな~(実は本家が苦手になったのはこのネタのクドさなんですが^^;;)

一番面白かったのは御名形の新たな一面(?)かなあ。
本家ではあまりに正体不明すぎたのですが、この作品ではもう少し彼の姿が垣間見えるし。
たしかに傲岸不遜なんだけど、御手洗に比べたらまだマシだし、意外に優しいところももってるし。
ところどころにタタル(のような人)を意識させる発言もしてるし、ファンにはニヤッとできる要素なのかも。
隣人にして相棒(?)の西田くんとの絡みも面白かったですよ。

っていうか、この小説の主役は西田くんでしょう。
いい人すぎて御名形にボロクソ言われてるけど、ほとん真相にたどり着いてるし、サブストーリーとしての朝美さんとの恋物語もねぇ。
こんな味わいは高田さんの作品では久しく味わってなかった気がしますね。
完全に不幸をしょいこむタイプになってるけど、でもそうとう憎めない。
御名形さん、いい相方も得ましたね。
(アレ、でも続編には登場するのかな?)

とりあえず、なんだか本編より期待してしまいそうです。
あとはもうちょっとミステリ部分を練ってね^^;;;




採点  ☆3.7