『犯罪ホロスコープ  本格推理小説 1』(☆3.5)



まずはあらすじ。

売れっ子ライター・虻原がマンションから転落死した。そのマンションには、虻原もかつて所属していた劇団の主宰者が住んでいた。最近、その劇団の芝居を巡り、二人には感情のもつれがあったらしいのだが…。虻原は、寄稿した雑誌の最終回のコラムに不可解な俳句を二首、残していた。さらに「六人の女王にたずねるがいい」という謎のメッセージが。はたして、俳句に隠された謎とは?(表題作)
星座にまつわる六つの謎を解き明かす、まさに端正な本格推理。

yahoo紹介より

なにかの記事で「新刊が一番待ち遠しい作家」に法月さんを挙げていた気がする。
新本格以降のビックネーム(?)の中でも際立って遅筆というのもあるのかもしれないけれども、なんだかんだといっても好きな傾向の作品が多いからですね、やっぱり。
とくに探偵にのりりんを配したシリーズは、出るだけで即買い。
しかしながらこの本の発売時期が国家試験と重なっていたというのと、その後図書館の予約本が大量にきたというのもあり、ズルズルとここまで引きずってしまいました^^;;

でもってやっと読破。
12星座をテーマにした短編集。そのうち牡羊座から乙女座を収録。
それぞれの短編の冒頭には星座にまつわる神話のエピソードが挿入されており、聖闘士星矢世代としてはいろいろとウヒョ箇所が^^
そのうち双子座の『ゼウスの息子たち』は『あなたが名探偵』で、蟹座の『ヒュドラ第十の首』は『気分は名探偵』で触れていますので割愛。
ただ一番やられた~と思うのは、『ゼウスの息子たち』ですね。タッチ世代にはある意味感涙モノです(笑)

それらも含めて実にらしい作品に仕上がってます。
つまりは、ロジック優先型でやや遊び心に欠ける地味で丁寧な短編集。ね、らしいでしょ(笑)。
で、それぞれの短編にどこか苦さみたいなものを残すしてるのもらしいな~と。
牡羊座の被害者の動機のやるせなさと、やりすぎ感たっぷりの最後の3行(このあたりのビミョーさはクイーンに通じるのかも)。
牡牛座のダイイング・メッセージが導き出す真相の、ある意味シニカルなラストも実にらしい気がする。
一方で、獅子座の事件での、論理的に偶然を語ってしまうのりりんのスタイルなんかも、ある意味この探偵のラフさを表しててニヤリとした。
ラストを飾る乙女座も、のりりんらしい主観にもとづく逆転の発想。まったく対照的な二つの死体の結び付け方がいいなあと思いました。
こういうのを読むと、たま~に作者の恋愛遍歴が気になる。

月氏の短編代表作『都市伝説パズル』ほどの切れ味はないものの、どこからきってものりりん印な、ファンにとってはある意味満足な一品。
でもちょっと苦手かな~という人には物足りなく思う気もしますね。
著者曰く「気楽に読んで愉しめる、そして後にはいっさい何も残さない」短編集。
これが一番的確にこの作品集の内容を表してるきがします(笑)
とりあえず、いつまでも待つから後半も出してね♪


採点  ☆3.5