『青空の卵』(☆4.2)  著者:坂木司



まずはあらすじ。

僕、坂木司には一風変わった友人がいる。自称ひきこもりの鳥井真一だ。
複雑な生い立ちから心を閉ざしがちな彼を外の世界に連れ出そうと、僕は日夜頑張っている。料理が趣味の鳥井の食卓で、僕は身近に起こった様々な謎を問いかける。鋭い観察眼を持つ鳥井は、どんな真実を描き出すのか。
謎を解き、人と出会うことによってもたらされる二人の成長を描いた感動の著者デビュー作。

yahoo紹介より

(たいりょうバージョンで記事を書こう)

先日おこなわれたゆきあやマニアクイズで1位を獲得した私でございますが、そのゆきあやさんが1番好きな作家とおっしゃられる坂木司さん。
しなかしながら、私は氏の小説を1冊も読んでいない。
これではゆきあやマニアの名が廃る。
ということで、早速図書館で借りてきて読んでみました。

おそらく私の記事を読んでいただいてる方々には、私の好きそうな作品だろうと思われる気がする。
結論からいうと、やはりホロッときた。
そういった意味ではそういう予想はあたりでしょうと。
でも、好物かというとそこまでは言い切れないモヤッとした部分は残った。

トリックとかそういったミステリ要素というのは弱い。
でも作者が狙ったるのはそこではないというのは明確だし、むしろそれは副産物的な要素なんだろう。
そこを批判するのは適切ではないと思う。
むしろ、ここで描かれる人間というものの物語をどう思うかなんだろう。

そういった意味では、ウワサどおりになかなかに甘い物語だったと思う。
特に坂木と鳥井の関係はイロイロな意味で、超越的な理想像だ。
あまりに理想像めいて、作り物めいた部分が匂いたつ。
特に坂木の涙に困惑してしまう鳥井の姿には、正直後半の方は唐突以外のなんでもなかった気がする。
またそんな鳥井に無償奉仕的な気持ちを持つ友情譚にも、青臭さの方がかなり先行。
それでもまだ救い(という言い方は失礼なのかもしれないが)だと思うのは、坂木がそのこういうについてきちんと向かい合っているところだろうと思う。
それがなかったら、ホントに作り物になってしまっただろうなと思ったり。

それぞれの事件で登場する人物に対しても、理解はできるものの共感するのは難しい。
これは一見美しくみえた構造をひっくり返すことで見えてくる本当の・・・という構造を際立たせる部分があるからかもしれない。
またそれによって、坂木と鳥井の関係を重ねてみせるという計算もあるのだろう。
実際それ自体はなかなかにインパクトがある。特に『秋の足音』の最後なぞはなかなかにブラックで、でも切ない。
ただ、それぞれの物語で鳥井がかなりシニカルに対応しているにもかかわらず、次の短編ではそれらの登場人物が普通に登場してくる。
こういった部分にちょっと違和感を感じた。
性善説とか、心が成長している・・・とかとはまったく別な部分のような気もするのだけれど。
そういう意味では好きなキャラは、木村のじぃさんと鳥井父ぐらいだったかも。

なんだか批判的なことばかり書いたけれども、それでも泣いてしまったのは、やっぱりどこかで憧れる世界があったからなんだと思う。
こんなに純粋だったら生きていけないと思うし、こんな友情は無理だと思うけれども・・・
やっぱり頑張ってみたいとは思うんだよな~。。。。
人間ひとりでは生きてけないしね。

とりあえず続きも読んでみよう。


採点  ☆4.2



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