『傷物語~パンドラ KODANSHABOX MAGAZINE Vol.1SIDE-Aより』(☆4.0)



まずはあらすじ。

全てはここから始まる!『化物語』前日譚!

全ての始まりは終業式の夜。阿良々木暦と、美しき吸血鬼キスショット・アセロラオリオン・ハードアンダーブレードの出逢いから――。『化物語』前日譚!!

yahoo紹介より

個人的に現時点での西尾維新の最高傑作だとおもっている『化物語』。
その前日譚ともいえる、『傷物語』が「パンドラ KODANSHABOX MAGAZINE Vol.1SIDE-A」に収録されました。
それにしてもこの「パンドラ」という本、よくわかりませんが講談社BOXによる新雑誌ということになるんでしょうが・・・
昨年の12冊連続刊行のような実験的なものはともかく、過去出版された作品を採録したりと、どうも混迷がつづいてるような。
しかも噂によると、この『傷物語』、講談社ノベルズから5月に刊行されるという話も。
なんだかなあ・・・。

ま、そんなぼやきはおいといて外伝的な前日譚のこの作品。
化物語』で語られず不満の声が挙がった、暦と吸血鬼との関係や忍野との出会いがばっちりと描かれています。
そっか、あの吸血鬼の女の子の名前はキスショットうんたらかんたら・・・っていうのか~(前作で名前でてましたっけ?)。

正直読みはじめのうちは、前作ほどの勢いはちょっとないのかなと~思ってしまいました。
ノリとしてはきちんと継承してるんですけど、前回あまりに強烈なインパクトを残したひたぎと神原が登場してないからなのか?
格闘シーンは、『刀語』シリーズで磨きがかかった部分もあるのか、サクサク読めます。
ただ、ちょっとわかりにくい因果関係があったりするのは、いかにも維新っぽいといえばぽかったですが^^;;
まあ、とりあえず暦とキスショット、忍野の出会いが読めるからいいかと思ってたのですが・・・

いやあ、途中から羽川が萌えキャラ街道驀進で、馬鹿モード突入。
バカ&エロな会話に大爆笑。
特にクライマックスの戦いに向かう直前の、暦と羽川の会話はもはやエロ小説です。
もしiizuka師匠が読んだなら、うひょひょといってしまうのではないかと思わず妄想。。。
そんなシーンのあとに、涙涙のシーンを描いちゃうんだから、さすがに西尾維新というべきなのか。
一気に読者はキスショットに萌えてしまうことでしょう(笑)。

前作ではとにかく、中身がほとんどないんじゃないかぐらいなギャグモードがキモな作品だっと思うのですが、この前日譚はその部分は抑え気味で、むしろ物語のメッセージ的な部分の比重が少し重くなってる印象。
そこで語られることは決して目新しいことではないかもしれないけれでも、見せ方が巧いせいなのか、心に染み入る部分が多々あったと思います。
こういったバランス感覚は、今の作家さんの中でも上位に入ると思います。
文体で好き嫌いはおおいに分かれる作家さんだとは思うんだけれども、それでも挑戦してみないのはもったいない作家さんだと思います。

とにかく『化物語』のファンも、語られなかったエピソードに不満を感じた人も、十分満足できる作品なんではないでしょうか。
ま、とりあえず5月のノベルズ版が販売されたら手にとって欲しいです。
「パンドラ」を買うには少々1890円のお値段がね^^;;


採点  ☆4.0