『呪縛の家』(☆2.8)  著者:高木彬光


まずはあらすじ。

<悪魔に伝言するがよい。今宵、汝の娘は一人、水に浮かびて殺さるべし>
その予言通り、紅霊教教祖の孫娘が一人、湯船の中で血まみれになって殺されていた。これが発端となり、教祖と三人の孫娘をめぐる連続殺人がくりひろげられていった。
教祖を大伯父に持つ旧友の頼みで教団本部に出向いた私・松下研三は、すぐ名探偵神津恭介に助けを求めた。
呪われた一族を襲う連続殺人の謎に神津恭介が挑戦する長編推理。

amazonより

久しぶりの更新が、なぜかコレです^^;;
1月中には読み終わっていたので記事にしなきゃいけなかったのに、ダラダラと延ばしてしまいました。
もねさんの回覧本も回ってきてるので早く読まなきゃいけないのですが、もう少しで今読んでいる図書館本が終わるので、その次に速攻挑戦します。

で、本題のこの本。
デビュー作『刺青殺人事件』、クリスティの某名作の本歌取り『能面殺人事件』に続く、著者のデビュー3作目でございます。
乱歩の明智、横溝の金田一と並び称される名探偵神津恭介を生み出したにも関わらず、一部の名作を除いてなかなか他のミステリブロガーの記事でも取り上げられない作家さんですよね~。
ちなみに当ブログでは、これで4作目となります。(興味のあるかたは高木で検索してください^^)

まあ、しかし、とにかくの感想として

古臭っ!!!

先輩格である、乱歩・横溝と比べてもやたり「昔の小説だな~」と思わせる一品。
今の文章と昔の文章では文章構成も違うし、一概に上手い下手は比べられないものの、それでもこれは・・・と思っちゃいます。
殺人の見立て予告というべき予言も

「水に浮かびて殺さるべし」
「火に包まれて殺されるべし」
etc・・・

など、なんだか虫太郎の不朽の「迷作」をおもだしませんか?(笑)。
どうも前作もそうなのですが、この頃の高木さんはデビュー作の高評価ゆえにまさに“呪縛”がかかってしまって試行錯誤ってな感じがしてしまいます。
神津先生も登場シーンこそある意味色っぽい(?)ものの、どうも犯人に振り回されてる気がするしなあ。。。

そしてこの作品の最大の肝は密室トリックな訳ですが、その第1弾ともいえる浴槽の密室がすごい。
『刺青殺人事件』の浴室の密室トリックもある意味Bなトンデモナイ代物(このあたりは初期の島田荘司に影響を与えてるのか?)なんですが、まあ面白いんですが、今回のコレもかなりきてますのう^^;;
いや、アイデアとしては面白いし成程と思うのですが、いくらなんでもこれはバレるだろうと。
少なくとも現代では絶対無理なトリックなんですが、この時代でもこれは流石に警察も見破るだろうと^^;;

この作品は挑発的な「読者への挑戦状」が複数挿入されてる訳ですが、犯人は結構簡単にわかっちゃうんじゃないのかな~。
なにしろある意味ここまで露骨に書かれると、勘のいい読者は見破るでしょう。
そのせいか、ラストのラスト、おそらく著者が一番やりたかったことのかっこ良さがちと半減しちゃってるんですよね。

とにかく、ある意味コテコテの本格ですから、興味のある方は一読してみてください。
でもさすがにこれは今さら読まれないだろうな~。


採点  2.8