『The Book jojo's bizarre adventure 4th another day 』(☆3.8)


まずはあらすじ。

ジョジョ」20周年を記念して、乙一渾身の小説化。「週刊少年ジャンプ」「ウルトラジャンプ」誌上で絶大な人気を誇る荒木飛呂彦氏の長期連載『ジョジョの奇妙な冒険』を稀代の若手作家乙一氏が構想・執筆に2000日以上をかけ、渾身の小説化を実現。

amazonより

実に久しぶりのような気がする、乙一の新作小説。
とはいっても、今回はノベライズ。伝説のマンガ『ジョジョの奇妙な冒険 第4部』を5年の歳月をかけたそうな。
人気漫画と人気作家のコラボというのは最近多い。
こち亀」しかり「デスノート」しかり。
しかしながら、それぞれにおいてコラボがしっくりはまっていたかというと、やや疑問が残る結果が多かった気がする。
ちなみに「こち亀」はひそかに挫折本だったことを、ここに告白。

で、今回はどうだったか。
乙一ファンであり、JOJOファンでもある私だが、それなりに面白く読めたと思う。
もともと第4部も結構好きだったというのもあるが、細かい小ネタが結構嬉しい。
このあたりの部分に関しては、感想の中でも賛否両論が激しい。
まあなかには、康一くんがいきなりマンガ『JOJO』の世界を語りだしたり、露伴の一人称が違ったりと、ん?と思うところがあるにはあるのだけれど、それぐらいは大目にみてあげてもいいんではと。

いっぽうでやはりマンガには、という部分もある。
その中でも痛切に感じられたのは、JOJO第3部以降の肝ともいえる、スタンドの表現。
若干焼きなおし気味の敵のスタンドに関しては、まあこれはこれでいいのかなと思うのだけれども、正直メインの登場人物のスタンドの凄みが文章だと分かりにくい。
マンガの主人公である東方仗助のスタンド『クレイジー・ダイヤモンド』の能力はまだ分かりやすいのだが、康一君の「エコーズ」の凄さはマンガを読んでないと分かりにくいだろうし、億泰の「ザ・ハンド」なんかは格闘シーンを読んでいても能力がイメージしにくい。
だから図書館での敵との戦いの場面などは、置いてけぼりになってしまう読者もいるんじゃないかと思う。
JOJO作品に対する乙一の思い入れは十分に伝わってくるのだけれども、やはりマンガは超えられないのかと痛感してしまう。

では、乙一作品としてはどうなのかというと、構成的にはジョジョ的世界観を踏襲しながらも、らしい作りにはなってると思う。
登場人物の視点の使い方や、転換のさせ方もまずまずだし、小ネタながらもミステリでもおなじみのトリックをさらっと入れてみたりというワザも見せてくれる。ただ、特に前半は思いいれが強い分、JOJO作品と自分の持ち味のバランスに苦労しているのではないかと感じさせられる部分もあった。
だから、前半に関しては正直やや乗り切れない部分も残った。
それに対し後半に関しては、実に乙一らしい纏め方をしており、ぐっとくる部分も感じられたし、JOJOの世界観とのマッチングもそれほど悪くなかったのではないかと思う。ヒロインの物語の処理の仕方に関しては、正直説明不足で投げ出された感もあるし、エピソードでの康一くんの行動に関しても、それまでのスタンドの描写力不足の為、ピンときづらいのが残念だけれども。

読み終わった感想としては、わりと肯定的であり、批判的な意見に関しては、それほど別物というのでもなかったんじゃないかなと思う。
その辺はぜひ皆さんの感想を聞きたいところであるけれども。



採点  3.8