『心臓と左手 -座間味くんの推理-』(☆3.3)


まずはあらすじ。

小学校六年生の玉城聖子は、十一年前に沖縄で起こったハイジャック事件の人質だった。
従姉の勧めで沖縄にある進学校を見学に行った聖子は、那覇空港で命の恩人と「再会」を果たす。そこで明かされる思わぬ事実とは―?(「再会」)。
警視庁の大迫警視が、あのハイジャック事件で知り合った"座間味くん"と酒を酌み交わすとき、終わったはずの事件はがらりと姿を変える。
これが、本格ミステリの快楽だ!切れ味抜群の七編を収録。

amazonより

なんだかんだで石持氏を読んでしまう自分。
記事を振り返ってみると、☆の数的にはともかく、記事の内容に関しては疑問符をほとんどつけてる。
それでも、ここ2作は作品として読めたので、今回も若干期待して手に取ったのだが。。。

まず、最初に紹介文について。
これは他のブロガーの皆さんもおっしゃられていたが、『月の扉』の続編のような売り方はちと違うだろうと。
特に「がらりと姿をかえる」というのは、フェイクもいいところ。
あくまで後日談の域をでない程度のお話だったのは残念。
まあ、『月の扉』を読んだのは発売された年だったし、そんなに覚えていないからがらっと変えられても気づかんだろうと思う。
『月の扉』の感想については、ゆきあや嬢の記事を拝見すると、

「すったもんだの挙句、読者の目ん玉がひんむくほどの「唖然」とする収束を見せるという
個人的にはミステリ史上もっとも壁本に近い”名作”」

とおっしゃられているが、違和感的な部分は感じつつもそこまで悪くもないといった感想だった気がする。
これは、もしかしたらその後に読んだ、『水の迷宮』『セリヌンティウスの舟』が、どうにもこうにも心理的に納得しがたい「迷作」だったせいで、その印象がかすれてるのかもしれないが。

で、再び本書。
1月初めに読んで、すでに図書館に返却しているので、細かい感想を書くのが難しいのだけれども、面白くは読めました。
確かに、事件で知り合っただけの男にここまで情報を漏らしていいのかという部分や、そもそもあまりに警察をなめてるとしか思えない証拠物品の調査に関する不手際など、ツッコミどころは山ほどある。
が、結局石持氏の作品って毎回こんなんだよね、と思ってるだけに前述の2作に比べたらまだこちらの方が・・・。
ん、これは読み方としては失礼かな?
読み手としてそこをクリアしてれば、今回の作品はそれなりに推理のアクロバットを楽しむことが出来るんじゃないでしょうか。

とにかくこの人に人間描写を期待してもダメなんだろうな~と改めて思った作品。

採点  3.3