『生還者』(☆3.2)  著者:保科昌彦


まずはあらすじ。

生き残ったことこそが、罪の証なのか――。

二十人以上の犠牲を出した土砂崩れから半年。四日間も飲まず食わずで生き埋めにされながら、一命を取り留めた「奇跡の生還者」が、ひとり、またひとりと不審な死を遂げていく。
これは呪い? それとも……。
暗闇で得体の知れない何かに背中をなでられるような、極上の恐怖をお約束します。戦慄のサイコ・サスペンス!

amazonより

みなさま、新年あけましておめでとうございます。
そして本年も宜しくお願いいたします。

ということで、予告したとおり新年1発目の記事は保科昌彦『生還者』でございます。
正直言ってこの作者さん、まったく知りません。著者紹介を読むと、2003年の日本ホラー小説大賞長編部門を受賞してデビューされた方そうでございます。
ちなみに現在は会社員だそうでございます。なるほど専業作家さんではないのですね。
ええ、そんなことはなにも気にしませんが。

で、なぜこの本を選んだかというと、『このミステリーが読みたい』(「このミス」とは違いますよ~)の記事の中で触れていて、面白そうだったから。
粗筋は基本的に上の通り。物語の構成も土砂に埋もれた旅館の中で一人が告白話をし、次にその人が似たような状況で死亡し・・・というパターンが繰り返されます。
それらの不審死の謎を生還者の一人が追うわけですが・・・

ううむ、なんだか微妙に怖くないぞ^^;;
いや、まったく怖くないわけではない。探偵役(?)を務める主人公がだんだんトラウマと、迫りくる死の恐怖に壊れていくさまは説得力がある。
あるのだが、それはこういう状況になったらそりゃ怖いだろ~的な、頭の中で整理して感じる怖さ。
逆をいえば、本の中から迫ってくる怖さというのが今一歩足りないのだ。
ひとつにはパターン的な構成で出来ているだけに、それを重ねるごとに怖さが増す仕掛けが利いてないで、少々マンネリ気味に感じてしまうところ。
そして、物語をサスペンスからホラーに持っていきたいのか、それともミステリーにもっていきたいのかがどっちつかずになってるのがマイナスなのかもしれない。

終わりの展開をみれば、結局ミステリだった。
著者が仕掛けた罠には見事騙された。単純なだけにもしかしたらホラー的な構造が目くらましとして効いたのかもしれない。
ただ結局物語をミステリで収束させてしまったせいで、せっかくの土砂からの生還者が・・・というネタ自身がぼやけてしまったのは勿体無い。
ミステリとしても、トリック的な部分は買うけれどもロジック的な部分では腑に落ちない。
蛇足的なエピローグなんかもいらんよな~、多分。

ううむ、なんとももやもやした年明け。
結局、一番怖かったのは本の○○だった気がする。
読み終わった時に気づいたのが、こりゃナカナカ^^;;;


採点  3.2