『春期限定いちごタルト事件』(☆3.9)  著者:米澤穂信


小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。きょうも二人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。
それなのに、二人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に迫られてしまう。
小鳩君は、果たしてあの小市民の星を掴み取ることができるのか?
新鋭が放つライトな探偵物語、文庫書き下ろし。

yahoo紹介より

確かこの本を買ったのは、ゆきあやさんが続編『夏期限定トロピカルカフェ事件』を記事にした少しあと。
その日付が2006年の4月ですから、ゆうに一年以上寝かせた上に春の季節に読んでないのがねえ・・・。

可愛らしいイラストの表紙と、ファンシーなタイトル。そして主人公は同級生の男女。
そしてどう読んでみても「日常の謎」的なあらすじ・・・
こうくれば、たいりょう好みの“青春成長譚&ちょびっと恋愛エッセンス”な小説だろうと読み始める。

うひょひょひょひょ・・・・・ひょ?

むむ、なんか思ってたのと違うぞ?
なんだ「小市民」って!?青春とは、こう、なんだ、もっと熱いもんじゃないのか!!
っていうか、そんなになんでもかんでも押し殺そうとしてたら「小市民」的高校生じゃないだろ!!
そりゃあらすじには「恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係」、そこはもっと、ぐっと!!

などとぼやきつつ・・・ううむ、面白いんだよな~、想像してたのとちょっと違った意味で。
高校一年生にしてはちょっと大人びた小鳩くん、そして存在感を消させたらスナイパー級の小山内さん。
彼らのどこかハードボイルド(?)で、どこか抜けてる感がユニーク。
特に最初はなんとも地味な雰囲気だった小山内さんの、節々から漂う(「狐狼の心」ではその本性をチラッと見せますが)デンジャラスな香りがいいですのう~。
でもちょっかいは出したくないですが^^;;;
いったい彼女にどんな過去があったんだ?

収録されてるのは5篇の短編。
正直なところ、これらの「日常の謎」に関しては、魅力的というにはちょっと甘い部分があって、ミステリ的な完成度はそんなに高くないと思う。
全体としても主人公二人がある意味淡々としてるので、盛り上がりに欠ける部分もあるのかな~。
そんな事を思いつつも、作品としての吸引力があるから不思議。
今までにも似たような小説がありそうで、でもどこか微妙にズレた感じがあるからなのか。

とにもかくにも、「小市民の星」を目指す小鳩くんと小山内さん。
二人がいったいどうなっていくのか。
彼らの過去も含めて目が離せないのは確かです^^


採点  3.9