『太陽の塔』(☆3.9)  著者:森見登美彦


私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。三回生の時、水尾さんという恋人ができた。毎日が愉快だった。
しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった!
クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も持たぬ男が無闇に疾走する。
失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。

yahoo紹介より

怖ぇ、ゴキブリキューブ怖ぇ!!
そんなものが行き交う喧嘩はイヤだ!!

とにかく主人公達の生き様が素晴らしい!!
強烈までの自負心と、奇妙奇天烈な理論武装の元、この世のものどもをぶった切る!!
いやあ、真似したくね~。絶対真似したくね~(笑)。

『夜は短し走れよ乙女』に続いて、モリミ作品は2作目でございます。
完成度は『夜は短し~』の方が上ですが、妄想炸裂っぷりはこちらの方が上でしょう。
といいますか、主人公達が繰り広げる社会への抵抗(?)っぷりは、馬鹿馬鹿しいまでにみみっちい。
鴨川等間隔の法則」(→詳しくはこちら。こんな法則を実測してしまってます^^;;)を崩す為にカップルの間に座ってみたり、振られた彼女を研究対象にしてみたり(強がり)、もはやフォローのしようもございませぬ。

個人的に爆笑してしまったのは、デートで行った遊園地で観覧車を、「これは僕のもの」といって一人で乗り、降りてきた時には彼女がいなかったというエピソード。
いやあ、同じような思い出が僕にも・・・・あるわけはありませんが、ここまでいってくれると失笑のレベルを超えてます(笑)。

ファンタジーノベル大賞受賞作ということで、別れた彼女の脳内になぜか電車でたどり着けたり、ある種の世界のシンボルとしてあの「太陽の塔」(実物は1回しかみたことがありません)があったりしますが、個人的にはそれよりも彼らの生き方がファンタジーです(笑)。

まあ、ほんとにどうしうようもない男達の、どうしようもない物語。
普通に書いたら、どうしようもない話です。
でもそんな物語を、なんだかほのぼのとした空気漂う不思議な魅力の小説に仕上げているのは、やっぱりモリミさんの文章ですね。
これが2冊目のモリミ作品である僕が言うのもなんですが、ほんとこの独特の文体ははまるとひきこまれますね。
この文体があってこその、妄想炸裂ワールドに作品としていい意味で奇想天外なリアリティを与えてくれてると思います。

この作品、『この文庫がすごい! 2007年版 』に輝いております。
お値段、420円。
内容から考えると、大変お徳な気がします。
自らの不遇を嘆く男性諸君。ぜひともこの本をバイブルに。
そんなあなたを遠くから観察させていただきます。


採点  3.9