『夜は短し歩けよ乙女』(☆4.4)  著者森見登美彦


私はなるべく彼女の目にとまるよう心がけてきた。
吉田神社で、出町柳駅で、百万遍交差点で、銀閣寺で、哲学の道で、「偶然の」出逢いは頻発した。我ながらあからさまに怪しいのである。
そんなにあらゆる街角に、俺が立っているはずがない。「ま、たまたま通りかかったもんだから」という台詞を喉から血が出るほど繰り返す私に、彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。
「あ!先輩、奇遇ですねえ!」
…「黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」。二人を待ち受けるのは、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、そして運命の大転回だった。
天然キャラ女子に萌える男子の純情!キュートで奇抜な恋愛小説in京都。


yahoo紹介より

無事、学校の前期認定試験も終わりました。
医学と心理学以外はまずまずの結果に終わって一安心。でもほんとこの2週間は辛かった^^;;;
とうことで久しぶりの更新でございます。

お題はモリミさんの『夜は短し歩けよ乙女』。
皆様の間でも非常に評価の高いこの作品、直木賞候補ですね。
個人的には北村さんの『玻璃の天』に期待をしておりますが(笑)。
図書館からやっと順番が回ってきたものの、試験中の為後回しにしておいたら返却期限が。
すいません予約のみなさん、延滞してしまいました^^;;

で、初めてのモリミ作品。
好みの装丁にワクワクしながら読み始めた当初は、モリミさん独特(ですよね?)の文体に戸惑う。

(・・・まずい、この文章好みじゃないかも・・・)

でもそれも第1話の途中まで。
清純派で天然という一部の男性諸君のツボを突きまくりのヒロインと、彼女を後ろからひたすら付回す先輩。
一歩間違えると引いちゃうこの二人の個性たっぷりの一人称に引き込まれる。
特にヒロインがつぶやく「なむなむ」のお祈り言葉がいいっすな~^^
まあ、男気だけの腑抜け人間な私にとっては、恋する乙女といかに親しくなるかに執念を燃やす先輩に感情移入しまくりでしたが(笑)。
すれ違い、ボケまくりを繰り返しながらじょじょに距離を短くしていく二人。。。

うひょひょひょひょ^^

読み通してみると、実に可愛くて愛らしい恋愛小説。
でも本書の魅力はそれだけじゃない。
古き奥ゆかしい(?)京都の街を駆け抜ける異形のガジェットがまた魅力的だ。

一体どういう仕組みになってるのか謎な三階建ての電車に乗ってる李白さん。
古本蒐集家にとっては神にも悪魔にも見える古本の神様。
恋する女性に再び会えるよう、パンツを履き続ける(オイ!!)パンツ総番長。

一歩間違えると別世界の物語になってしまいそうなこれらの要素が、実に自然に(?)物語に溶け込んでいる。
そのアヤカシ達が駆け抜ける、夜の先斗町、神社の古書祭、魑魅魍魎が跋扈する(?)学園祭・・・
異空間もどきなのに、どこか懐かしい匂いが漂う舞台設定。
とにかくどこもかしこも違和感が無く、愛すべきものてんこ盛り。

特に乙女と先輩の関係に大きな転換点をもたらす最終話の竜巻の正体がまさか李白さんの○○とはお釈迦様だって考え付くまい。
どのエピソードが良かった・・・というよりどのエピソードも楽しかったというのが正しいこの作品。

いやあ、今回の直木賞
ハイレベルの大混戦っす。


採点  4.4