『タイムスリップ明治維新』(☆2.8) 著者:鯨統一郎



渋谷の女子高生・麓うららは、幕末にタイムスリップしてしまった。
時代を我がものにしようとたくらむ、小栗上野介によってゆがめられた歴史を、正しく進めなければ現代に戻れない。
うららは、桂小五郎坂本竜馬西郷隆盛勝海舟の間を奔走し明治維新を目指す。『タイムスリップ森鴎外』に続く第二弾。

『タイムスリップ森鴎外』に続く第2弾。
前回は森鴎外が現代の日本にタイムスリップしてきたが、今回は前作のヒロイン(?)うららが幕末の明治維新にタイムスリップ。
読み終わってもなぜうららがタイムスリップしなければならなかったのが良く分からないお茶目っぷりは、さすが鯨時代劇(笑)。

それにしても、物語の底本となるのが司馬遼太郎竜馬がゆく』、そして自作『邪馬台国はどこにある』というのがバカ。
これだけみても相当バカ・・・と思いきや、正直その期待は外れてしまった。
まず『竜馬がゆく』に関しては正当な時代劇であり、創作ではあるものの時代考証もしっかりしている。また、『邪馬台国~』に収録されているネタ本の真相にしても、おそらく収録されたなかでは最もマトモな回答だったと思う。
つまりはネタ本が二冊ともまともだったせいで、本作のバカっぷりが前作に比べてかなり控えめなのだ。
うららが人斬り半次郎と遠距離恋愛したり、桂小五郎岩倉具視と寝ちゃうというあたりはユニークだし、現代に戻るのをたいして焦らないという発想も珍しいと思う(読んだ中では篠原千絵「天は赤い河のほとり」以来・・・喩え間違ってる?)。

ただいかんせん物語の核の一つ「明治維新の黒幕」が誰なのかという部分で、その答えがあまりにも普通すぎる。
ライバルたる小栗上野介が予想外に地味だった事や、リンカーンやノーベルといった同時代を生きた偉人達が来日していたというバカネタが思ったより決まってない事も含め、全体が笑えそうで笑えないものになっている。

バカミスというには、突き抜けてないし笑えないのだ。
むしろ気軽に幕末の日本史を勉強する為の本になってしまってると思う。

前作のメメント・森(今思うと、「死を想え」というラテン語なのがまた意味深というか^^;;)がかなり個性的なおっさんだっただけに、幕末の人達がみんな普通の人だったのが残念。そこいじくらないと。それに天理教の教祖とか名前だされても、普通の人はピンときませんがな。

まあ、面白く読めるのは読めるのですが、これだったら別に鯨さんじゃなくてもいいじゃん。
お願いします、もっと弾けてください。



採点  2.8