『密室に向かって撃て!』(☆3.5)



その夜、烏賊川市の外れ、鳥ノ岬にある十条寺食品社長宅に銃声が轟いた。
撃たれたのは、偶然居合わせた「名探偵」鵜飼杜夫。事件は、探偵がかすり傷で呻いている間に起こる。
いつのまにか「探偵の弟子」にされていた戸村流平と鵜飼が挑む、不可能殺人の謎!!
銃声のカウントダウンとともに、明らかにされた真実とは!!

東京創元社紹介より

物語開始早々、前作に引き続き登場する刑事たちが引き起こした(?)間抜けな騒動。
さらに、これまた前作で重要な役(?)を担った登場人物の死に意表を疲れました。

語り口調は相変わらずの笑えないギャグと可笑しみのあるユーモアに溢れています。
正直前作でダメだった人は、手を出さないほうが無難かもしれませんが私は好き。
前作に比べて神の声・・・ていうか作者のツッコミ(あるいはフォロー)が控えめになった分、キャラの個性そのものが醸しだす雰囲気が濃くなって、ユーモアミステリという部分ではより作家の個性が落ち着いてきた気がするのは私だけでしょうか。
そろそろ登場人物同士におけるボケと突っ込みの役割もはっきりしてきて、シリーズ物として骨格も備えてきたし、お約束といえばお約束の恋愛要素もあまりのベタっぷりがかえって微笑ましい(←ただこのネタは次の作品でもひっぱられるのかな?)

一方で本格風味は少し薄れてきたのかなという気も。
元々前作もガチガチの本格というよりは適度な緩さを持っていたものの、それぞれの伏線から導き出されるロジックの収束の仕方は完璧に本格だったと思います。
対してこの作品、八発の銃弾を巡る論理の逆転なぞは犯人が分かりやすいとはいうもののオーソドックスかつ丁寧に収束されていると感じる反面、容疑者の絞込みに至る過程でやや登場人物の個性、あるいは著者のユーモア調に足を引っ張られたような弱さを感じました。
トリックが明かされる場面も、前作の方が切れ味良かったような気がするしなあ~。
そもそも犯人がもうこの人しかいないだろうというのは見え見えのような気がしますしな(笑)。

こうやって2冊読んでみますと、このシリーズに関していえばゆる~い路線がなんとなく見えてきたような気がするのですが、『密室の鍵貸します』の記事のコメントでべるさんが3作目4作目をプッシュされています。果たしてどう裏切ってくれるのか(?)楽しみにしたいところですなあ。