『館島』(☆3.8)



巨大や螺旋階段の下に倒れていた当主の死因は、転落死ではなく墜落死だった!?
天才建築家・十文字和臣の突然の死から半年が過ぎ、未亡人の意向により死の舞台となった異形の別荘にふたたび事件関係者が集められたとき、新たに連続殺人が勃発する。
嵐が警察の到着を阻むなか、館に滞在していた女探偵と若手刑事は敢然と謎に立ち向かう!瀬戸内の孤島に屹立する、銀色の館で起きた殺人劇をコミカルな筆致(!)で描いた意欲作。
『密室の鍵貸します』でデビューした気鋭が放つ、大トリックと謎解きの面白さを楽しめる本格ミステリ。

yahoo紹介より

『殺意は必ず三度ある』の記事で、オススメの東川作品をみなさんに聞いたところ、冴さんがオススメしてくれたのがこの本。
烏賊川シリーズの最初の作品が無かったのでこちらを借りてみました。

いやあ、オヤジギャグ連発には少々参りました(笑)。
最初はその都度脱力症状に陥ってしまいましたが、だんだん慣れてきたのかそれとも変態妄想刑事がツボに入ったのか、後半は結構笑ってたような。
特にベットに座る女探偵を前にして、野球に模して繰り広げらる妄想は、「アホじゃ・・・」と呟きながらクスクス。。。
意味無しギャク的な部分は正直西尾維新の方が数段上だと思うのですが、あちらは意味無し会話を成立させる事によって物語を構築する戯言。
こちらはとにかく投げっぱなしということで、比べるのは適当では無いかもしれません(笑)。
まあ、これだけ本格的な要素を散りばめながらギャグをかます、なおかつ本格へのオマージュをほのかに匂わせるというのは、アリだと思いますね。

ただそのギャグセンスと裏腹に明解なロジックで犯人を特定していく手段は本格そのもの。
トリックについては賛否両論あるだろうしBトリックと言われても反論しにくいところがありますが、それを踏まえてアリバイを崩していくという部分に関しては齟齬は無いんじゃないだろうか。

ちなみのこのトリック、個人的に有り。
その理由のひとつとしては、読みながらトリックが早い段階で分かった事があるのかもしれない。
直前のBトリック炸裂のl 『凶鳥(まがとり)の如き忌むもの』を読んでいたから思考が柔軟になってたのかもしれないが(笑)、墜落場所が特定できない墜落死体、館の図面などなどきちんとしたヒントは提示してあるから、行き着こうと思えば行き着けるだろうと思う。
自分の思考の中でトリックが解明できた以上、これを無しということは出来ないよね。
といいつつ、それでも犯人を特定できなかった自分には探偵の才能まったく無しというところかもしれない。

全体としてはギャグとBトリックに彩られた真っ当な本格ミステリという位置づけにはなるし、これが東川さんの持ち味なのかなと感じさせてもらった。
とはいってもまだこれで3冊目だから偉そうな事はいえませんが。
非常に読みやすいし、読んでよかったと思える本でありました。
冴さん、ありがとうございます♪