『ビニ本団長と鉄板句女』第十六回「一番度胸がある人は?」

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「ブーーーーーーーーーーーーー!!」

ぎゃっ!何?何か踏んじゃった?ド、ドジッコ‥

一瞬の静寂の中、マイクを通じてのどかな川柳が聞こえる
「まぁまぁは日本で最初に来たパンダ‥‥‥‥あははははは!!!」

遊撃隊の運命やいかに!?さらに、スパイの正体とは‥?

ビニ本団長と鉄板句女』 第十六回「一番度胸がある人は?」


スピーカーから流れてくるまぁまぁの会心の笑い声。
なぜまぁまぁの声がスピーカーから聞こえてくるのだろう・・・。
けれど、今の鉄板句女達にそんな突っ込みをしている余裕は無かった。

「G・・・ヨン様、今の音は・・・」

海山らいすが不安そうに辺りを窺いながらそう尋ねる。
Mr.Gはせわしなく赤外線ゴーグルを操作していたが、舌打ちとともにそれを外した。

「どうやら、赤外線レーザーではなく紫外線レーザーが張り巡らされているようだ・・・」

Mr.Gの額に汗がじんわりと浮かんでいる。
ほっ、私が何かふんだわけじゃなかったのね。そうよ、私がドジッコなわけが・・・
でも、紫外線レーザーって・・・初めて聞いたけどなんかすごそう・・・。
でもそんな物を使うなんて、本楽堂協会っていったい。
はっ、紫外線!!そんなのものに当てられたら、私の美肌が焼けちゃうじゃない!!
日焼け止めクリームは?誰か持ってないの?
思わずクリームを求め視線をあたりにおくる鉄板句女。
と、その時視線の片隅に影が通った。

「Gさん、今向こうの通路に誰かが・・」

その言葉にMr.Gと海山らいすが振り返る。

「めぽさん、影はどの方向へ?」
「えっと、多分あの通路の奥に入っていったような」
「あの通路ですか・・・うーん、『気をつけよう 暗い言葉と 甘い道』なのですが・・・」

そう言いつつも、通路に近づき先を窺うMr.G。
その影に隠れるように鉄板句女と海山らいすも覗いてみる。
通路は行き止まりになっているが、突き当たり部分の左右にドアがある。

「こうしていても仕方がありません。一か八かで突入してみましょう。」

一か八かですか?早すぎません?だってまだほとんど探索してないでしょ!!
もし誰かいたらどうするの?私達武器もなにももってないのよ!!
おもわずMr.Gを止めようと彼の腕に手をのばす鉄板句女。

スカッ♪

鉄板句女の手の動きを察知したかのように、Mr.Gは一瞬早く動き出す。
まるでコントみたいにずっこける鉄板句女。
後ろをついていた海山らいすが慌てて支えてくれたので、なんとか頭から落ちることを回避できた。

「あ、ありがとうございます。」

ふうっ、あぶないあぶない・・・
あれ今私、自分でスカッ♪って言わなかった?まるで純朴さんみたいに・・・・

(・・・・・・「忍者だが 誰にも譲らん ドジッコは」ですよ♪・・・)

少し前に聞いた純朴の言葉が甦る。
ち、違うわ私、ドジッコじゃないもん。せいぜい予備軍どまりのはず!!
今のもたんに純朴さんの口癖がうつっただけ・・・
どうでもいいことで頭を混乱させる鉄板句女。
はっ、と正気に戻ったときにはすでに二人は突きあたり左側のドアの前で中を窺っていた。
あわてて駆け寄る鉄板句女。

「どうやら人の気配はありませんね。さてどうしましょうかね。」

ガチャ。
「失礼しま~す」

ら、らいすさん!!何開けてんの!!誰かいたらどうすんの!!
うーん、なんだかいつも体重計に乗ってるってイメージしかないんだけど、もしかしすごい度胸の持ち主?
動揺する二人をよそにすたすた入っていく海山らいす。
しかたなく後を追って部屋に入ると。

ティッシュ箱の山、山、山!!!!!
部屋の全ての壁に対して天井までティッシュの箱が重なっている。
な、なにこれ!?
目の前のとんでもない光景にあっけにとられつつも、箱に近いづいてみると・・・

「これ、ティッシュの空箱が本棚になってるんだ!!」

そう目の前に広がるティッシュ箱の山と思われていたものには、すべて本が収納されていた。
おもわぬ事態に顔を見合わせつつも、「イトウ家の食卓」ばりの収納術に感心してしまう。
しばし、この異能の芸術を堪能する3人。

うわ~、すごい数の本だわ~。漫画、SF、ミステリ、古典、評論集・・・もしかして国会図書館並み?
しかもこれだけの本をティッシュの空箱にいれて天井まで積み上げる技術もすごいし。
もしかして私達とんでもない相手に喧嘩を売ってるんじゃないかしら。。。
目の前の広がる光景に、徐々に鉄板句女の不安が高まる。

その時、

「これは!!」

海山らいすの大声が部屋に響き渡る。

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その頃、名ばかりの偵察作戦を敢行していた乙女組・・・もとい偵察隊はMr.Gの予想とおり、当初の目的を忘れ飲み食いツアー状態になっていた。
なかでも店長&マダムコンビはミステリ横丁と名づけられた屋台の酒をすべて飲みつくすという荒業を披露していた。

「ふう、やっと本調子が出てきたわ。まだまだたくさん店があるみたいだし、私達にはちょうどいいぐらいかも。ねえ、マダム。」

店長の問いかけに笑顔で答えるマダム白猫。トレードマークといえる巻上げ髪は酒を飲むたびに増量していき、いまや開始時より2倍以上の高さになっている。

「そういえばkattyさん、純朴さんは?」
「ああ、純朴さんならさっきステーキ大食い大会があるからって駆け出していったわ。さすが肉食っコだわ♪」
「あらまあ、あれだけ食べていらっしゃったのに、まだ・・・さすがね♪私達も負けていられませんわね」
「そうよ!!」

完全に当初の目的を忘れた二人は次の屋台に向おうとする。
その時、kattyの目に一人の人物の姿が映った。

「あら、あんなところで何をしているのかしら?持ち場を離れて大丈夫なのかしら?」

その人物はあたりを窺いながらも、人ごみを掻き分け武道館に近づいていく。
一瞬お互いめくばせし、二人は後を追おうとする。

「マダム、いくらなんでもその髪は目立つんじゃない?」
「そうですわね。では」

シュルシュルシュルシュル~~~~~~~

髪はまるで生きているかのようにどんどん短くなっていく。そして最後には一般人と同じ髪の長さになっていた。
まるで奇術のような光景にまわりにいた人達から賞賛の拍手が巻き起こる。
それをかきわけなが、二人はその人物が歩いていった方に進んでいく。

彼女達が見たのはいったい?そして海山らいすが発見したものは・・・。
事態は急展開を迎える。


                                            (第十七回へつづく)

※店の名前、個人名などはほぼフィクションです(笑)