『丹波哲郎、大霊界に旅立つ』

俳優丹波哲郎氏が一昨日夜、肺炎の為逝去された。享年84歳。

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僕らぐらいの年齢以上の方にとっては知らない人はいないのではないか?
それぐらい知名度のあった方ですが、その一部は「霊界の案内人」丹波哲郎として知っているのかもしれませんね。

僕が初めて丹波さんを意識したのはNHK水曜時代劇「真田太平記」だったと思います。
丹波さんはその中でも主人公真田信之の父真田昌幸を演じられておりました。
地域の一豪族であった真田家を支え、まさに偉大なる策謀家でありながらどこか人間味を感じさせる昌幸。
丹波さんの重厚かつユーモアな味を感じさせる演技はまさにはまり役。あの低音ボイスに痺れましたよ。

その次に印象に残っているのは故・松本清張原作、故・野村芳太郎監督の傑作映画「砂の器」でしょか。
清張をして数少なく原作よりも優れた自作の映像と言わしめたこの映画、氏の扮するベテラン刑事が多大なる貢献を果たしたのは間違いないでしょう。

その時ふと思いました。
そもそも役者には時代劇向き演技の人とそうでない人がいると思います。
例えば前者で思いつくのは里見浩太郎松平健。時代劇では素晴らしい演技を披露なされますが現代劇ではお世辞にも上手いとはいえません。
後者でいえば、印象に残ってるのは大河ドラマに出演した時の豊川悦司でしょうか。違和感バリバリでしたね。
また両方をこなせる役者さんでも、時代劇用の演技・現代劇用の演技と違ったタイプの演技プランでこなされる役者さんも大勢いらっしゃいます。
最近では大河ドラマ新撰組」などのようにあえて現代風演技で統一させ、あらたな形の時代劇で見せるパターンも多くなってきました。

その中で丹波さんは、両方とも同じ演技でありながらそのどちらにもまったく違和感なく存在できる役者であったのではと思います。
真田太平記」と「砂の器」などでも台詞回しはザ・丹波としかいいようのないものだったのにも関わらずそのどちらにおいても作品の中でしっかり輝いておりました。
これはひとえに丹波さんの持つオーラとその台詞回しに漂う圧倒的な説得力にあったのではないでしょうか。
僕の好きなB級底抜け超大作系の映画では必ずといっていいほど丹波さんが出演、そして劇中で演説シーンがあります。
その演説のほとんどにおいてかなりムチャクチャな論理を振りまいているのですが(特に「ノストラダムスの予言」の演説シーンやは有名。見るのは難しい作品ですが)、とにかく丹波が言うのなら間違いない!!そう思わせる何かを持ってらっしゃいました。
丹波の出ない底抜け超大作はただのつまらない映画だ、そう感じてしまうぐらいです(笑)。

またそんな一方で「霊界の案内人」としての丹波哲郎としてもお茶の間には愛されていたと思います。
とにかく誰も信じていなくても、とにかく熱弁をふるう。大御所なだけにそんな事をしたら嫌われそうなのに、そんな丹波さんには誰でも突っ込むことができる、そんな気さくな印象も感じさせてくれました。
自宅訪問系の番組で見た、氏の霊界研究室みたいな部屋に飾られてある、大日如来の顔が丹波哲郎曼荼羅図の衝撃は今を持って忘れることが出来ません。

台詞を覚えてこない、丹波の視線の先には必ずカンペがある、舞台でカンペが遠くて見えず思わず近寄った、などの有名なエピソード(半分は実話らしいですが)が愛情を持って語られる、本当に素晴らしい人間性を持った方だったのだろうと想像できます。

国際派俳優の先駆けでもあった氏の演技、もっともっと見たかったです。
でももうそれも適うことはありません。また一人好きな俳優がいなくなってしまった。
寂しくなりますね~。

合掌。