「サッカーW杯ドイツ大会総括」

ラームの衝撃的なゴールから始まり、ジタンの退場に終わった今大会。
それなりにドラマチックな試合も多く、全体の試合レベルとしては日韓大会より高かったのではないだろうか。

個人的に感じたのは、守備の組織はますます堅固なものになり、個人で打開できる攻撃というのはますます存在しえなくなってきてるという事だろうか。
これはサッカーを楽しむための質が変化していっている表れなのかもしれない。
そういった意味では優勝したイタリアは攻守両面におけるバランスという意味でも優勝に値するハイレベルなチームだったと思う。
ブッフォン、カンナバロを中心としたあまりにもパーフェクトな守備もさることながら、ピルロを中心にした攻撃も得点者が10人に及ぶ事が示すとおり、攻撃の手段において多様性を兼ね備えた、カテナオチから一歩進んだという意味でも同国史上最強のチームといえるかもしれない。

そのイタリアで破れたとはいえ、フランスの劇的な復活も印象深い。日韓大会でのグループステージ敗退とともに不要論を叩きつけられたベテラン達の鮮やかなリベンジには正直驚いた。ジダンが今大会での引退を発表をしていなかったらここまで勝ち進めたかどうか疑問がないでもないが、それでも復活した堅守はイタリアにも劣るものではなかったし、ジダンを中心とした攻撃陣も決勝トーナメント以降は輝きを増していた。
最後の最後でより勝利を欲したイタリアの軍門に降り、さらにはジダンの退場という悲劇的な結末を迎えたのは残念だったが・・・。

そのほかのチームにおいて、いい意味で印象に残ったのは、開催国ドイツ、アルゼンチン、スペインあたりだろうか。

ドイツは開幕戦こそ2失点を喫し守備の不安を改めて露呈してしまったがその後は試合ごとに改善され、また攻撃陣も大会を通して好調を維持したと思う。準決勝で完璧なるイタリアの前に涙を飲んだものの、未来ある若手の台頭もありチームとしては最良の結果を得られたのではなだろうか。

アルゼンチンは、今大会の強豪国の中でも異色だったと思う。組織を生かすための個人というチームが圧倒的に多い中、リケルメという突出したタレントを最大限に生かす為の組織を構築し、クラシカルなサッカーの美しさを見せつけてくれたと思う。ただリケルメと共に歩んだチームはリケルメと共に大会を去っていってしまったが・・・。

万年優勝候補といわれながら結果の残せないスペインだが、今回は予選グループから素晴らしい完成度のサッカーを披露し、その内容は今大会こそとの期待を抱かさせてくれた。正直フランスとの1戦は相手が悪かったとしかいいようがない。まさかあそこまで劇的にチームが変貌するとは思わなかった・・・。


逆に期待はずれだったのが、ブラジル、イングランド、オランダだろう。

ブラジルは結局最後までロナウドを起用し続けたパレイラ采配が裏目にでたとしかいいようがない。得点こそ決めたもののそれはロナウドの力というよりも中盤の、それもカカの力といわざるを得ない。明らかにトップフォームから程遠い怪物にはチームを牽引する力も体力も見えなかった。なにより、かつて「カルテット・マジコ」がもっとも輝いた瞬間、ピッチにいたのはロナウドではなくロビーニョだったことをブラジルファンは知っていた。知らなかったのはパレイラだけだったのかもしれない・・・。

イングランドはとにかく怪我に泣かされたというべきかもしれない。不動のエース、ルーニーは怪我から復帰したばかりで未知数だったうえ、オーウェンまで怪我で失ってしまってはもはや手の施しようがなかったというところか。大会前最強のセンターハーフコンビとも言われたジェラード、ランパードも機能したとは言いがたく、最終戦負傷交代したベッカムの涙が一番印象に残ってしまった。

オランダはファン・ニステルローイの不調が痛かった。彼が機能しないことによりロッペン頼みの現状が浮き彫りになってしまった。いくらロッペンが未来あるスター選手であるといっても、そこを抑えれば沈黙するのが分かっているということは、相手チームにとって組みやすい相手となってしまったのではないだろうか。このチームの進化は2008年のユーロで見られるのかもしれない。


個人に目を移せば、やはりジダンの復活は外せないのかもしれない。予選グループでは正直みるべきプレイが少なく決してチームにいい効果を与えてると思えなかったが、予選3試合目ジダンをここで終わらせてはいけないという結束がフランスに出来たのではないだろうか。この試合以降チームが劇的に変化するとともにジダンも2000年のユーロを思い起こさせるようなプレーを見せてくれた。それだけに決勝での愚行があまりにも残念としかいいようがない。

今大会はベテランの活躍が印象に残ったが、その一方で次世代のスター候補達は本領を発揮したとはいいがたかったかもしれない。かろうじてC・ロナウドが大会を通じて素晴らしいキレをみせたのが印象に残ったが、最も期待された若手であるメッシは見せてはくれたものの彼本来のポテンシャルからすると物足りなかった。
そういう意味で最大の発見はフランスのリベリーかもしれない。攻守に惜しまない運動量。切れとスピードの融合したドリブル。チャンスメイクのセンス。ジダン引退後のフランスの攻撃を担うのは、かつての悪童時代の面影を顔に残すこの男だろう。

最後に今大会の個人的MVPとベストイレブンを。
MVPはイタリアのカンナバロ。世界最高のGKブッフォンが後ろに控えてるとはいて、体格のハンデをまったく感じさせない強固なディフェンスは特筆に値したし、イエローカードを貰わなかったのも高く評価されるべきだと思う。

ベストイレブン(本当は4-5-1にしたかったのですが、選手の都合上・・・。)


                  クローゼ(ドイツ)


                 リケルメ(アルゼンチン)


C・ロナウドポルトガル)                     リベリー(フランス)


                   ピルロ(イタリア) 

        ビエラ(フランス)            ガットゥーゾ(イタリア)



    カンナバロ(イタリア)               テュラム(フランス)

                アジャラ(アルゼンチン)


                  ブッフォン(イタリア)