『図書室の海』



あたしは主人公にはなれない―。関根夏はそう思っていた。だが半年前の卒業式、夏はテニス部の先輩・志田から、秘密の使命を授かった。高校で代々語り継がれる"サヨコ"伝説に関わる使命を…。少女の一瞬のときめきを描く『六番目の小夜子』の番外篇(表題作)、『夜のピクニック』の前日譚「ピクニックの準備」など全10話。恩田ワールドの魅力を凝縮したあまりにも贅沢な短篇玉手箱。

Yahoo紹介

ノンシリーズの短編集である。収録作は雑誌等に掲載された作品に書き下ろし2編を加えたものだが、よくも悪くも恩田作品である。
どこか曖昧とした世界感とストーリーが持ち味(だと思ってる)恩田さんだが、この短編集に関して言えばほとんどの作品が曖昧の中に取り込まれる前に終わってしまうといった感じで、いつも以上に?マークが多かった。
とりあえず収録作を振り返ってみます。

『春よ、こい』

いきなり?だった。20ページほどの短編だが、最初は意味が分からず読み返してしまった。時間が錯綜し登場人物がひっくり返る・・・そんな構成で最後に一応結末らしきものが明確にある。
しかしながら構成が曖昧すぎて、結末の結末らしさを味わうことが出来なかったかな。


『茶色の小壜』

シオドア・スタージョンの「君の血を」というドキュメンタリー・ホラーを意識して書かれたそうな。この作品は未読なのですが、一編の中ではすっきり読めると思う。この読後感のなんともいえない怖さはなかなかホラーだ。


『「イサオ・オサリヴァン」を探して』

大長編SF『グリーンスリーブス』の予告編として書かれた短編。いろいろな人物のインタビューを通してイサオがどういった人間だったのかを浮かび上がらせる。この手法は恩田作品でもしばしば見られるものだが、そこから浮かび上がる答えが予告編以外の何者でもないのは残念。予告編小説を否定はしないが、ひとつの作品としての精度もあげて欲しかった。
ただし、本編を読みたくなるという意味では成功かもしれない・・・。


『睡蓮』

『麦の海に沈む果実』の主人公、水野理瀬の幼年時代。なかなか評価の難しい作品で、『麦の海~』を読んだ後だけににやりとして読める部分があったが、果たしてこれから先に読んだ場合、これはおもしろいのだろうか?とにもかくにも、『麦の海~』から読むか、『睡蓮』から読むかそれが問題だ・・・(個人的には『麦の海~』からで・・・)


『ある映画の記憶』

わりと明確な映像を内包した作品であるが、ある意味愕然の結末としさらにはラストで?となった。だからなんだと???
それより驚きなのは、後書きによるとこれが半ば実話だということ。どこからどこまでが実話なのよ?


『ピクニックの準備』

読んだことがある人ならピンとくると思うが、長編『夜のピクニック』の予告編である。これまた映画館で上映前に流れる予告編以外のなにものでない・・・。
ただこちらを読むと、本編のある謎に関して重大なヒントを与えられてしまう気がしないでもない。
とにかく単体としての面白さという意味ではほとんど無いに等しい。


『国境の南』

『茶色の小壜』と同じドキュメンタリー・ホラー。斬新なアイデアの作品ではないが、古典な王道の趣きを漂わせていて、それと恩田さんの文章が醸し出す魅力の相性はいいと思う。派手さは無いがじわじわとくる作品。



イメージはわかる・・・・でもココロコってなんだよ~~~~~~~~~~???


『図書室の海』

六番目の小夜子』の番外編であり、関根秋の姉、夏が主人公。予告編ではなく(当然だが)番外編なので、単独としてもそれなりに味わいはある。
タイトルの意味が明らかになる(?)場面ではちょっとなるほどと思ってしまった。
個人的には岩井俊二の「ラブレター」を思い出しました・・・。



えっと、らしいといえばらしい作品ですが、僕にはちょっとわかりませんでした^^;;;



なんとなく感想を読んでもらえるとわかると思いますが、正直あまり面白いとは思えない短編集でした。
だからそんなに分量が無いにも関わらずなかなか読み進められませんでした。
もっともっと恩田ワールドにどっぷり浸かれば面白いと思えるのかな・・・。