マッハの恐怖・続マッハの恐怖 著者:柳田邦男



昭和41年春、日本の空は異常だった。2月4日に全日空ボーイング727型機が羽田沖に墜落し、3月4日にはカナダ太平洋航空ダグラスDC8型機が羽田空港で着陸に失敗、炎上した。翌5日にはBOACボーイング707型機が富士山麓に墜落し、わずか1カ月の間に300人を超える人命が失われた…。巨大技術文明の中での連続ジェット機事故の原因を追究した、柳田ノンフィクションの原点。

昭和46年7月、東亜国内航空のYS‐11型機『ばんだい号』が函館空港を目前に墜落。乗客と乗員68人は全員死亡した。そして翌47年、日航機の連続事故により、ニューデリーで90人が、モスクワで62人が命を絶たれた。ミスとは何か?なぜ事故は連続して起こるのか?綿密な取材と大胆な推理により、ヒューマン・ファクター(人間的要因)の真の意味を探った力作ノンフィクション。


(「DVD NAVIGATOR」データベースより)




日航ジャンボ機が御巣鷹山に墜落してから今年で20年になります。つい先日もアメリカの航空機の車輪が壊れ、奇跡的な緊急着陸がニュースになりました。
飛行機事故というのは、一つの事故で多数の死者が発生してしまうこと、日航ジャンボ機のように航行途中に墜落した場合などは事故原因を突き止めるのが困難、などという意味で非常に難しい事故かもしれません。
この2冊は、著者が主に計6例の飛行機事故を挙げ、事故原因の調査、それにまつわる数々の問題点を追及したノンフィクションの傑作です。

この中で行われる事故調査のあり方の問題は、現代の日本社会・政治の抱える問題点と数多くの事例で重なって見えます。大企業擁護の姿勢、あまりに恣意的な証拠採用の数々、不明点は反論できない人(事故で死亡した機長など)に押し付ける姿勢・・・。
本来事故調査というのは、原因解明とその責任の所在のありかを突き止めるのと同時に、未来への事故防止の観点がより必要とされなければならないはずです。
その中で日本の調査団の姿勢は、海外諸国のそれとあまりにもかけ離れた、いわゆる真実を突き止めるのでなく、真実を作りだす観点のみに集約され、未来に生かす姿勢の欠如が明らかであり、この体質を改善しない限り、また同じ事を繰り返してしまうという怖さを内包しています。

当時1新聞記者であった著者の熱意と努力にただただ感動を覚える1作です。
また航空会社の内部実情を描いた山崎豊子の『沈まぬ太陽』も合わせて読んでもらいたいところですね。