『のび太の月面探査記』(☆3.4) 著者:辻村深月

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 月面探査機が白い影を捉えたという大ニュース。のび太は影を「月のウサギだ!」と主張するが、クラスメートに笑われてしまう。そこで、ドラえもんひみつ道具『異説クラブメンバーズバッジ』を使い、月の裏側にウサギ王国を作ることに。月に興味を持つという謎の転校生・ルカとウサギ王国へ向かったのび太たちは、エスパルという不思議な力を持つ一族と仲良くなる。しかし、そこに彼らを狙う宇宙船が現れて…。のび太エスパルたちを救い出すことができるのか!?

Amazonより

 実を言うとの初辻村さん作品。辻村さんがドラえもんの大ファンというのは知っていましたが、実際にドラえもん愛がすごく伝わる作品だと思います。

 自分も子供の頃はドラえもん映画をすごく楽しみにしていた世代。中学生ぐらいにドラえもん映画を離れ、最後に見たのはリメイク版の「のび太の恐竜」なので、今は元ドラえもんファンというべきなのかもしれませんが、読んでいて「ああ、この場面はこんな感じなのかな」というのが、画としてすぐに浮かんできます。

 月面探査機の映像に写った映像から、のび太たちが今まで知らなかった世界に触れていくのは初期の映画で大好きだった「のび太の大魔境」を含めて繰り返されるパターンだし、そこにドラえもんの道具による架空世界の実現化というのも「のび太の魔界大冒険」でもありました。

 現実に繋がる空想の世界で繰り広げられる冒険譚はドラえもん映画の王道だし、そこでの友達との出会いと別れというお約束も踏襲。出会いと別れという意味では、「のび太の海底鬼岩城」のバギーや「のび太の鉄人兵団」のリルルといった悲しいものから、実現可能かは別にして再度の再会を誓うものまで色々とパターンはありました。

 この本(映画)がどちらのパターンかは読んでみてのお楽しみではありますが、おなじみのひみつ道具を使い、なおかつ映画版特有のキャラ設定(特にジャイアン)をきちんと取り込んである、まさに王道のストーリー。

 ある意味けっして意外性はないですが、この小説に関して言えばそれでいいんではないかと思います。ドラえもんに求めるの意外性ではなく普遍的な物語なのですから。


採点  ☆3.4