邦画『ラプラスの魔女』(2018年 日本)

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 連続して起きた2つの不審死。それぞれの事件現場が遠く離れているにもかかわらず、死因はどちらも同じ自然現象下での<硫化水素中毒死>…そして、驚くべきことに、死亡した二人は知人同士であった。警察はこの不可解な事件の調査を、地球化学の研究者である大学教授・青江修介(櫻井翔)に依頼する。 もし一連の事件が事故ではなく、他殺と仮定するならば。犯人は「完全無風状態になる一瞬」をあらかじめ知っていて、「その瞬間、致死量の硫化水素が発生する場所」へと「ピンポイントで被害者を誘導した」ことになる。そんなことは絶対に不可能だ。[ラプラスの悪魔]でもない限り…。


監督:三池崇史
原作:東野圭吾
脚本:八津弘幸

* 櫻井翔:青江修介
* 広瀬すず:羽原円華
* 福士蒼汰:甘粕謙人
* 志田未来:奥西哲
* 佐藤江梨子:水城千佐都
* TAO:桐宮玲
* 玉木宏:中岡祐二
* 高嶋政伸:武尾徹
* 檀れい:羽原美奈
* リリー・フランキー:羽原全太朗
* 豊川悦司:甘粕才生


 原作を読んだ時に、小説としては可もなく不可も無くだけれど、登場人物に役者が肉付けすることによって面白くなるんじゃないかと思った。キャストとしても、青江の櫻井くんに違和感を感じるけど、他の人はまずまずイメージ通りかなと思うし、予告編も面白そうだったし、見に行ってみた。

・・・なぜこうなった(´□`川)

 尺の関係で改変されるのは分かるけど、それがことごとく悪い方向になってダイジェストな2時間ドラマ観てる感じ_| ̄|○ il||li
 登場人物として主要3人のキャラは概ね原作通りだと思うけど、物語としてみると武尾のポジションが原作に較べてかなり薄くなってる。確かに2時間の枠に納めるとしてどこかを削らないとは思うけど、武尾のポジションがまったく説明されないうえに、演じるのが高嶋政伸さんなので無駄に怪しい。途中公安まで出てきて対立するのに、円華達って何の組織のイチ員!?とツッコミたくなります。羽原の設定も原作よりもちょっとだけマッドな感じ、それをリリーさんが演じるので怪しさどんと倍!!ですな^^;;トヨエツさんはもう、あなたがその立ち位置の役ってことは何かがまってるよね・・・的なオーラを出しまくりでした。

 刑事の中岡(玉木さんかっこいい)は原作と同じくらいの役割だけれども、そもそも映画の尺が足りないので、ストーリー・テラーのような扱い。そもそも青江もどちらかというとそういうポジションなので、語りでどんどん物語を進めちゃう感じでしょうか。

 逆に「ラプラス」の二人、円華と謙人の二人に関してはやっぱりこの二人が主役だよねって感じです。尺が足りない(こればっか)ので、色々な葛藤について伝わりきらないところはあるけれど、それをすずちゃんの演技で補う感じでしょうか。宣材の黒ドレスはありませんが、要所要所で見せる表情がいいですね。やっぱり彼女はこういう役が似合うなぁと。
 謙人役の福士君も、出番は少ないけれどいい意味で普通の感じ。山崎賢人くんみたいな軽み、竹内涼真くんみたいな飄々感よりも、かっこいいんだけど派手じゃないナチュラルさが逆に謙人の葛藤を等身大に見せてくれたのでは。

 櫻井くんはもうなんでしょう、やっぱりオヤジですな。わざとオヤジ臭い服装しているけれど、少なくともこの映画の主役じゃないな、と。いや、演技がどうとかというより、役的にストーリーテラーだからそういう意味ではけっして間違ってないのかも。でもこの役も尺による改変で損はしてると思う。さらに研究室の助手役がなぜか志田未来さんなので、若干研究室の研究室らしさが・・・ここはピシッとした人を置いて欲しかった・・・。

 とにかく役者は頑張ってる。ただ尺を削るための場面・登場人物の取捨選択がことごとく裏目に出てる。ストーリーの展開を分かり易く(武尾のように設定が不明でもなんとなくイメージはできる)はしたけれど、グワッと盛り上がるところが無いというか。円華が青江に自分の能力を説明するところとか、クライマックスの場面とか、もっとヴィジュアル的に盛り上がれるんじゃないかと不満。月光の虹の場面は良かったけどね。

 最初に尺ありきなのかもしれなけど、やっぱり必要最低限の尺は上げて欲しい、そうすれば『祈りの幕が下りる時』まではいかなくても、もっと面白くなった気がするんだけどなぁ。。。