『広島電鉄殺人事件』(☆1.0) 著者:西村京太郎

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運転士は何を見たのか? 広島、長野、東京――事件を繫ぐ長い細い糸に、十津川警部が挑む! 広島電鉄の若い運転士が暴漢に襲われた。ライトレイルの制限速度を大きく超過する不祥事で、停職中の身だった。彼はなぜ突然速度を上げたのか? 暴行事件との関係は? やがて浮上する長野県渋温泉で発生した七年前の未解決事件。十津川警部が追う連続殺人の現場は、長野、東京から広電宮島線へ! 長編トラベルミステリー最新作。


Amazonより

 かつて愛読していた西村京太郎トラベルミステリー。去年久しぶりに『終着駅殺人事件』を読み返したけれど、新刊・初読の本はホントに学生時代以来だと思う。今回は地元広島の広島電鉄(広電)が舞台。私も広電沿線に住んでおり、学生時代は広電で通学していたので、今回手にとってみる。

 あれ・・・西村さんてこんなに読みづらかったっけ???一体なんでだろうと考えると、とにかく句読点が多い。
 冒頭の文章を引用。

「月刊鉄道新時代」では、来月号で、広島電鉄の特集を予定している。広島で特に成功している、路面電車の取材に、編集中の宮本彰、三十歳が、自ら行くことになった。同行するのは、若い女性カメラマン、籾山里奈、二十五歳である。

 なぜそこで文章を区切るんでしょう。あまりにテンポが狂うので、句読点を無視して読もうと思ったのですが、やっぱり目に入るとそのリズムで読んでしまいます。うーむ、句読点て偉大なんだな、と改めて気づかせてもらいました。

 本筋に戻すと、広島電鉄の運転手の暴走事件が過去の未解決事件と結びついて、という展開。広電の新型車両を繰り返し解説したり、広電の駅の中から分かった事が書かれたりするところはトラベル・ミステリたる所以でしょうか。しかし、十津川警部も報告で「マンションが多い」「北側にJR山陽本線が並行する」と聞かせれても参考にならないと思うのですが。

 ミステリとしての骨子も非常に弱いというか、ほぼほぼ事件の展開を十津川警部が刑事の勘で推理して、その通りに事件が進みます。登場人物の行動や心理についても肉付けが無いので物語としての説得力も感じられないです。いってしまえば、プロットを読んでいる感じでしょうか。
 ラストの唐突な終わり方も、「え、なぜそうなっちゃうの」という感じで放り投げられます。ミステリとしての意外性は正直まったくありません。

 最近トラベルミステリと呼ばれるジャンルはまったく読んでませんでしたが、この作品を読んで思いました。僕が愛読してた頃の西村京太郎は今でいうところのトラベル・ミステリではなく、アリバイトリック(時刻表トリック)ミステリだったのかもしれません。
 かつて西村京太郎ミステリに感銘を受けた人間としては、時代の流れ、残酷さを感じさせて、寂しい気持ちになりました。。。
 

採点  ☆1.0