『松谷警部と三鷹の石』(☆3.6)  著者:平石貴樹

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 ある事件をきっかけにして本庁に引き抜いた白石巡査の直感を、松谷警部は信頼している。当初は白石の推理力を動員するまでもないと思われた三鷹の事件だが、諸事情が判明するにつれて複雑な様相を見せはじめた。ケーキは消え、足跡は一つだけ。厭な予感が松谷の脳裏を掠める。打開策の見えないまま地道な捜査を続けるうちに…。
 本格ミステリ道まっしぐら、好評シリーズ第二作。



Amazonより

 平石さんの松谷警部&白石巡査シリーズ第2弾。とはいっても、このシリーズの正式名称名があるんだろうか?やっぱり「松谷警部シリーズ」?

 前作はアメフトを題材に取り上げていましたが、今回はカーリング。ちょうどカーリングブームが起き始めた時期の時代設定なので懐かしさも感じました。アメフトもカーリングも世界的スポーツながら、日本ではややマイナーだけれども、このへんは著者の拘りなんでしょうか。過去の事件の凶器がカーリングのストーンだったりして、前作よりスポーツとのリンクはしっかりしてる。

 離れた2つの場所で発見された2つの死体。当初は無理心中として片付けられそうな内容だったけれども、現場の状況に白石巡査が疑問を感じ事から思わぬ方向に転がっていく。現在の事件だけでなく、過去に起きた未解決事件も関わってくる構成は前作より複雑。ただ、登場人物のキャラクターがそれぞれしっかりしてるので、前作でちょっと感じたこいつ誰だっけ?感は薄まったかなと。

 事件のトリックとしてはそんなに、な感じで、むしろ登場人物達の感情の動きがいろいろと絡み合い事件を複雑にしている。逆に感情の縺れが解き明かされ事によって、事件のトリックや物理部分がみえてくる。とにかく心理面にウエイトが置かれたミステリだと思う、その中で描かれるある登場人物たちの少し変わった恋愛心理。変わっているけれど、その人なりに真っ直ぐな思いは賛否はともかくとして印象に残る。ただ、結果としてそれが事件への伏線になってしまったりするのは少々複雑な気持ちになる。
 そして事件の核となる犯人の動機となると、なお複雑な気持ちに。この動機に共感できるかというと正直いって共感は出来ない。いや、犯人の思考の過程はきちんと組み立てられてるので、理解は一応できるんですけど、やっぱり歪んでるよな~。そんな犯人に対してラストで強烈な一撃を繰り出す白石巡査も中々なもんです。
ただ、クライマックスの謎解きを延々と語らせてしまう部分も、それまでは小説としてバランスが良かっただけに少し単調に感じました。
 ミステリとしての完成度は前作より高くなってると思うし、伏線の貼り方も細かいと思う。ただ探偵役を務める白石巡査と主人公(?)ながらワトソン役を務める松谷警部のキャラクターのバランスがよくないというか、前作よりも白石巡査のキャラがボケてる気がしました。途中で白石巡査のエピソードが挿入されるんですが、シリーズ物として成立させる為、な蛇足感が少しみえたかなぁ~。いや、もしかしたら白石巡査のキャラが自分好みから少しずつズレていってるような気がするからそんな感想なのかもしれんですが。
 



採点  ☆3.6