『2006年私的ノンミステリベスト10』

2006年私的ミステリベスト30①(30~21位)はこちら
2006年私的ミステリベスト30②(20~11位)はこちら
2006年私的ミステリベスト30③(10~1位)はこちら


20006年私的ミステリベスト30に続きまして、「ノンミステリベスト10」です。
対処は今年初めて読んだ本で、ミステリ以外という条件以外はノージャンル、漫画もありですよ。
ということでさっさと始めましょう。


10位  『うらなり』 著者:小林信彦

まずは、夏目漱石「坊ちゃん」に登場するうらなりを主人公にした1篇。
原作に忠実なうらなりの造詣、しかしながらその裏には著者の「坊ちゃん」解釈が滲みますね。
特にマドンナとの再会はハラハラドキドキですよ♪


9位  『安徳天皇漂海記』 著者:宇月原晴明

実は初読の際の印象はあまりよくありませんでした。
しかしながら宇月原さんの他の著作を読むにつれ、いつのまにか頭のどこかに引っ掛かる作品に。
間違いなくいつか読み直すでしょう。そういった意味でこの順位にしました。


8位  『壬生義士伝』 著者:浅田次郎

実は未読、映画を見ただけにストーリーを知ってる事が不安でしたが、杞憂でした。
浅田作品の王道ともいえる泣きのストーリーながら、歴史の波に翻弄された人達の悲哀がきっちり伝わってくるし、新撰組に対する著者の思い入れが感じられる一編。
映画と較べてみると面白いのかもしれない。それにしても初めての時代小説とは思えない筆致には感服。


7位  『アッシュベイビー』 著者:金原ひとみ

ある意味、『独白するユニバーサル横メルカトル』と並んで生理的にくる要素がある作品。
20歳の女性がこんな作品を書いたっていうのがすごいな~。しかも一応(?)お嬢様だし。
ただ非凡なものは感じるし、海外作品なんかもきちんと読み込んでるんだろうなと思います。
将来期待してもいい作家さんでしょう。


6位  『おれはねこだぜ』 著者:佐野洋子

絵本です。きいちごジャムさんが紹介なさってたのを読んだわけですが、いやあこりゃすごい^^;;
とにかく「さば臭い」(笑)作品ですが、絵が素敵なのとリズムカルな文章がおもしろいですよぅ。
そして、あのラスト。この衝撃はぜひご自分の目でお確かめ下さいませ。


5位  『本棚探偵の冒険』 著者:喜国雅彦

いやあ、今さら僕が語る必要もないほど面白い本を巡るエッセイ集。
本(古本)に関わること全てにムチャクチャな拘りを持ってぶつかっていく姿が、おかしくも羨ましい。
自分の古本歴と被るところもあり、読んでてちょっと懐かしい気分になりました。
ああ、古本を漁るための大金が欲しい。。。


4位  『いとしのヒナゴン』 著者:重松清

やっぱり広島県人としては「ヒバゴン」ならぬ「ヒナゴン」は外せません(笑)。
とにかく方向は違えども、心に熱い魂を持った登場人物が巻き起こすドタバタ劇の一つ一つが心に残る。
そんなエンタメ部分だけでなく、「今の自分のもう一度見直してみようぜ!!」というメッセージ性も満点の作品。
ああ、映画(井川遥主演)も見てみたくなりました。。。


3位  『黎明に叛くもの』 著者:宇月原晴明

安徳天皇漂海記』の初読の印象が悪かったのでそんなに期待していなかったのですが・・・
いやあ、ムチャクチャ面白かった。時代モノとしても伝奇SFとしても1級品の出来でした。
あの松永久秀と斉藤道三がイスラムの秘術を受け継ぐ義兄弟って発想、凄すぎです。
三部作の他の作品も含めて、いやあ傑作ですよ、これ。


2位  『チョコレートコスモス』 著者:恩田陸

1位と差のない2位です。
恩田さんの作品の中でどれか1冊、といわれるとこれを選ぶかもしれない。
演劇という世界の独特の呼吸を閉じ込めることに成功していると思うし、その迫力は半端でない。
確かに「ガラスの仮面」へのオマージュではあるが、決してそれだけにとどまらないキチンとした本歌取りである。
とにかくこういう作品を書いてしまう恩田さんに嫉妬してしまう。


1位  『夕凪の街 桜の国』著者:柴田哲孝

「ミステリベスト30」の1位がノンフィクションだったのと同様に、こちらの1位はなんと漫画です(笑)。
第9回手塚治虫文化賞新生賞、第8回文化庁メディア芸術祭大賞受賞作品であり、2007年には田中麗奈主演での映画公開が決まっています。
この視点で原爆を描いた作品というのは少ないんではないだろうか。そういった意味では漫画という分かりやすい媒体でこの作品が書かれた意義は高いと思う。
ぜひとも『21世紀の「はだしのゲン」』として読み継がれて欲しい作品です。


以上がノンミステリベスト10ですが、ミステリベスト30と比較してみるとミステリとノンミステリの境界線が結構適当だなと^^;;
まあ「このミス」で平山さんが1位を取ったように、これから先もっともっとその境界線は曖昧になっていく傾向があるのかもしれません。
閑話休題
以上でノンミステリベスト10の発表を終わります。

後は再読本ベスト10とワースト5ですね、はい。