『ビニ本団長と鉄板句女』最終回最終回1時間スペシャル「プチ家出の終わり」(前編)

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アーニスが、意を決してちいらんばだに近づく。
「会長、行きましょう。われわれの仕事に片をつけるのです。」

片を付ける?

ビニ本団長と鉄板句女』                            最終回1時間スペシャル「プチ家出の終わり」(前編)


アーニスはちいらんばだの手を持ち立ち上がらせた。
そのかたわらで野いちごジャムがちいらんばだの体を支えている。
心配そうな表情を浮かべる野いちごジャムに、

「例の・・・『伝説のビニ本』の場所に連れて行ってください。ご存知ですよね・・・。」
「・・・はい。」

3人は連れ立ってステージの奥に消えていく。
あわてて追いかけようとする常連客の面々。
その前に一人の女性が立ちはだかった。粋に和服を着こなしたしっとりと落ち着いた雰囲気の女性。
突然の闖入者に、戸惑う面々。

あれ・・・この和服、どこかで見たことがあるんだけど・・・
でも顔にはまったく見覚えがないし・・・

頭を捻る鉄板句女。と、よこでkatty店長が息を呑む声がする。

「も・・・もしかして、女将?」

その店長の言葉にどよめきが広がる。

あっ・・・そうか、どこかで見たと思ったら女将の着物だ!!
もしかして、被り物取っちゃったんだ。うわ~、女将の素顔ってこんな素敵な大人の女性だったのね。
私もこういう落ち着いた女性になりたい・・・どだい彼女には無理な考えを張り巡らす鉄板句女。

「店長さんのおっしゃる通り、あちきです。ついさっきまで裏のスペースに縄で括られていたのですが、皮から脱皮して縄抜けをしてここまで。それより・・・」
「そう!!それより、あの人達のことを追わなきゃ!!」

マダムしろねこはそう叫ぶと、彼らが消えてった方へ駆け出そうとする。

「お待ち下さい!!追わないで下さいまし!!」

その言葉に、マダムは立ち止まり女将の方を向く。常連客の面々もいぶかしげに彼女を見る。
みんなの困惑を代表するようにビニ本団長が声をかける。

「でも・・・彼らだけにしてはまた何がおこるか!!なにより私が長い間追い続けてきた伝説のビニ本が目の前にあるのにだまってられないですよ!!」

あ、団長は最後までビニ本なんだ。こんな切羽詰った時にまでそこ拘らなくても。
でもそれに同調する常連客達。しかも男限定。だから男って。
そんなざわめきを死線(視線)一発で黙らせるkatty店長、さすがです。あ、いつのまにか鞭持ってるし。
そんなことより・・・。

「伝説のビニ本・・・あちきもお義兄さん・・・アーニスさんからその内容は聞いています。でもそれはけっしてビニ本団長、そして殿方達が想像しているものではございません。ほんとうにそれは恐ろしいものなのです。そんなものを作り出した責任を、あの人は取りに行ったのです。皆さんがその魔力に捕らわれないように。
だからどうか、その気持ちを察してくださいませ。」

女将の心の叫びともいえる悲痛な声に押し黙る一同。

そんな・・・今までみんな一緒に頑張って、アーニスさんだって一生懸命にみんなと一緒に動いてくれたのに。
それなのに一人で抱え込むなんて。。。

「大丈夫。心配しなくてもいいわ!!」

突然の心強い台詞が響く。振り返ると瞳にすべてを達観したような色をただよわせたあんび~るさんが。

「彼は戻ってくるわ。私のテニス予報にもそうでてる。だから信じましょう。」

自信溢れるあんび~るの言葉に、それを信じていいものかどうかお互いの顔色を窺う常連客達。
そのなかでじっとみんなの言葉を聞いていたビニ本団長が口を開く。

「♂!!分かりました!!ここまで一緒にきた仲間です。それを信じなくては漢(おとこ)ではありません。
私も伝説のビニ本、あきらめます!!」

とにもかくにもみんなをビニ本探しに巻き込んだ張本人ビニ本団長の言葉。
彼がそういっているならもうしょうがない。だって目的が無くなったんだから。
ようやく常連客の心が一つになる。

「ありがとうございます、ビニ本団長さん、そしてみなさん・・・。」

感動の瞬間。
と、とつぜん大きな揺れが武道館を襲った。
ゴゴゴゴゴ~~~~~という激しい音を伴った揺れに、武道館に詰め掛けた観客達に動揺が広がる!!

「いけない、これは大きいぞ!!みなさん早く外へ!!」

いち早く冷静になったMr.Gの言葉に慌てて外に避難し始める観客達。
鉄板句女達もその流れに身を任せるように武道館の外に出た。

不思議な事にあれほど揺れていたはずなにの外を出てみると、何も感じなかった。
しかしゴゴゴゴゴ~~~~~という音は続いている。
不審がる面々。

「あ~~~~~~~~~~~~~、店長のサングラスが~~~~!!」

突然の純朴の叫びに彼女の指差す方を見る。
その先には武道館の屋根の頂上に鎮座している玉ねぎみたいな置物、擬宝珠があった。
よく見ると揺れは擬宝珠を中心に発しているようだ。
しかもなぜか擬宝珠の先っぽにはkatty店長の壊れたサングラスが引っ掛かっている。

「どうしてあんなところにサングラスが・・・。」

呆然とする店長。

「あの・・・アロンアルファEXグレートタイプ(サングラス用)でくっつけたんで、乾かすためにあそこに・・・。」

なぜそんなところに置くの、純朴さん!!
風でも吹いたら危ないじゃない!!っていうかいつのまにあそこに持っていったの?
さっきまで私達の後ろで直してたよね!?

「あ、玉ねぎが!!」

その叫びに耳を傾けるまでもなく、誰もが擬宝珠の異変に気付いていた。
屋根と擬宝珠の接している部分、そこから白煙が溢れ始めたのだ。
煙の勢いが増すにつれ、武道館の振動、そして音はどんどん大きくなる。

ゴゴゴゴ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ドッコ~~~~~~~ン

あ、飛んだ!!玉ねぎが飛んだ!!
サングラスも一緒に!!もしかして、アロンアルファで玉ねぎまでくっついたんじゃない!!

サングラスのピンチにいち早く反応したマダムが巻き上げヘアを懸命に伸ばす。
しかしもう一歩のところで届かなかった。

「だめ、お酒が足りない・・・。」

呆然とした表情でみんなが見つめる中、擬宝珠は青空に彼方に消えていった。
そして訪れる静寂。
誰もが目の前で起こった事態を信じられない面持ちでその場に立ち竦んでいた。

とその時、武道館の入り口から人影がよろよろと現れた。
貧ぼっちゃまの格好をしたアーニスさんだ!!


                                            (最終回後編へつづく)

※すいません、長すぎて一話では終わりませんでした。
  ということで前・後編2部構成でお楽しみください。後編は本日午後アップ予定。
  でも密かに祖母の家に行くので間に合わなかったら、月曜日に当ブログにて公開します。
  めぽさん安心して下さい。あなたへの無茶振りじゃありませんよ!!