『ビニ本団長と鉄板句女』 6.忍者登場?そして・・・

第五回はこちら

「念のため変装したほうがいいと思います」

突然の鉄板句女の「変装発言」に、その場は水を打ったように静かになる。
しかし、鉄板句女‥。変装なぞで本楽堂協会を本気で騙せると思っているのか?

ビニ本団長と鉄板句女』 第六回「忍者登場?そして・・・」


静まり返る店内。みんなの視線を一身に浴びる鉄板句女。
もしや、なにかマズい事を言ったのか?それともバカな事?
鉄板句女を後悔が襲う!!

パチパチパチパチ・・・・・
どこからとも湧き上がる拍手。

「ブラボ~~~~~~~~~~~~」
席から立ち上がり直立不動で賛辞をおくるまぁまぁ。

「♂!!♂!!♂!!♂!!♂!!」
突然叫び始めるビニ本団長。これは誉めてるのかしら?

カウンターでは、katty店長がマダム白猫とグラスを合わせている。
あれ白猫さん、いつの間にきてたのかしら??
店内のいたるところで、歓声があがっている。気の早い人達は、さっそく変装についての話し合いを行う始末。
あまりに素晴らしい反応に、鉄板句女しばし感動♪

「しかし一概に変装とはいっても、みなさん素人ですからね。参加する前に一度はみんなで出来を確認したいですね。」
常連客の盛り上がりすぎた情熱を抑えるように、アーニスは冷静に分析する。

「そうですね、確かにあーにすさんの言うとおりかもしれません。それでは・・・どうでしょう、まだ開催まで多少日もある事ですし、一度みなさんで変装して集合してみませんか?」
おっと、ビニ本団長も冷静さを取り戻したようだ。

「それじゃあ、3日後にこの店に変装をして集合するというのはどうかしら。」

katty店長が常連達にそう提案する。
しかしその冷静な口調とは裏腹に興奮の為かその頬をほんのりと赤くなっている。
店長の前には空になったウイスキーの瓶が・・・
あれ、あの瓶さっきあけたばかりよね?もう空?
まさかあの短い時間で店長と白猫さん二人で空けたの?
毎夜晩酌に付き合わされており、kattyが酒に強いのはしっていたが、うーんあらためて恐るべし店長(汗)。
いや、そんな事はどうでもいい・・・。

「その間に私も本楽堂協会に探りをいれてみるわ」

おっと、探りですか!!でも、どうやって??

パンパンパン・・・

kattyは突然手を打ち鳴らす。
なに???

シュタッ!!

シュタッ?????背後に人の気配を感じた鉄板句女が振り返る。
そこにはバンタナを巻いた女性が立っていた。
一見どこにでもいそうな純朴なOL風の女性・
しかし好奇心にキラキラ輝く瞳はこの女性がただ者ではないことを窺わせる。

(えっ?いつのまに?あれ、シュタッって・・・まさか天井から降りてきたの?忍者?)

困惑する鉄板句女をよそにkattyはその女性に話しかける。

「純朴さん、話は聞いていたかしら?」
「あいさ!!本楽堂協会にスパイとして潜り込めってことですよね♪う~~~~、ワクワク♪」
「さすが純朴さん、分りが早いわ。」

「えっと、店長・・・・こちらの女性は?」

アーニスが尋ねる。どうやらここにいる常連達もこの女性の正体を知らないようだ。
みんなの視線が二人に集まる。

「あら、皆さんは初めてだったかしら。こちらは乙女組会員No11、コードネーム“純朴なOL”。私たちは純朴さんと呼んでるの。彼女はね、この一見どこにでもいそうな会社のアイドル的雰囲気を使ったスパイ活動が得意分野なの♪」

「純朴です!!う~~~、ヨ・ロ・シ・ク♪」

突然の展開に唖然とする常連達、そして鉄板句女。
しかしどうやらマダム白猫は彼女を知っているらしく、妖艶な笑みを漂わせている。

ヨ・ロ・シ・クって言われても・・・なに乙女組って?
しかもスパイ活動が得意って、いったい普段なにをスパイしてるの?
もしかしたら本楽堂協会よりも怪しくないですか???
ついつい口に出そうになるツッコミを辛うじて押さえる。

「♂!!それは心強い!!ぜひお願いします!!♂!!」

ビニ本団長、いきなり賛成!!少しは怪しめ!!
パチパチパチパチ・・・・・いつのまにか常連客全員スタンディングオベーション
みんな純朴な魅力にやられてしまったらしい・・・。

「それじゃあ純朴さん、さっそくお願いね♪」
「あいさ!!バッチリみんなの期待に応えちゃいます!!う~~~~、それでは!!シュタッ、シュタッ、シュタッ・・・」

カラン、コロン、カララン♪

純朴はシュタッと口ずさみながら、「Katty's Cafe」を出て行った。
シュタッって自分で言ってたのか、う~~~~謎!!あ、口癖うつった・・・。

「それでは、本楽堂の調査は純朴さんにお願いするとして、我々は変装の準備をして3日後に集合ということで」
あまりにおかしい展開に動揺することなく、アーニスが話を纏める。

この人、いつも冷静だしみんなをまとめるのが上手いな~。仕切り向きなのかな?一般企業だと事務局長とか似合いそう・・・。

「♂!!それではその方向で話を進めましょう!!私も女将に連絡しておきます。あの方は変装の大名人でもありますから、私達の変装にもいいアドバイスを・・・」

突然鳴り始める携帯。誰のだ???
慌ててガクランのポケットを探り始めるビニ本団長。
えっ、この人携帯持ってるの?似合わないな~?
しかもこの着メロ、アニメ「魁!!男塾」のテーマソングじゃない!!
イメージどおりだけど、どれだけの人がその曲を知ってるの?

「♂、たいりょうですが・・・あ、女将・・・ええ、今ちょうど電話しようと思ってんですよ・・・ええ、実は急遽こちらに来て頂きたくて」

おっと、ビニ本団長、たいりょうって名前なのか?
どういう字を書くのだろう、大量?大漁?退寮?
それにしてもなんだ、この昼ドラのような唐突な展開は・・・
・・・・・・鉄板句女、しばし自分の世界へ・・・。

「えっ、来てる?ハイハイ・・・・は、店の前!?」

来てる!?店の前!?

カラン、コロン、カララン♪

ビニ本団長の会話を聞いていたみんなの視線が入り口に集まる。

「お、女将!!」

そこには不思議な・・・・不思議な人(?)が立っていた。
赤を基調にした着物を粋に着こなし、頭にはやはり赤を基調にしたかんざしが・・・・刺さってる?
あまりにつぶらで可愛い瞳を持った女将は、どこからどう見てもアザラシ・・・・

えっ?この人が女将?いや、人っていうかアザラシなんですけど、それもかなりプリティな・・・?
あっ、これって変装なのかしら?ビニ本団長も女将は変装の大名人だって言ってたし・・・。
あれ・・・でもこの人ってどこかで見たことあるなあ・・・・?

ハッ!!
突然思い出した鉄板句女。そうだ、アーニスのキーホルダーにそっくりだ!!
慌ててアーニスを見る鉄板句女。
アーニスの表情は、今まで鉄板句女が見たことがない、あきらかな動揺の色を浮かべている。

一体この二人の関係は!?

                                            (第七回へつづく)

※店の名前、個人名などはほぼフィクションです(笑)