『リアル鬼ごっこ』 著者:山田悠介



弱冠20歳の新進気鋭作家が放つ奇抜な発想と自由奔放な筆致で描くニュータイプ・ホラー・ノベル登場。史上最凶最悪の追跡劇がいま始まる。


リアル鬼ごっこ」ですよ。
まずレビューを書く前に。この本を手に取った理由。それはあまりに評判がひどいから、一体どんなもんなんや?という野次馬根性であったことを認めます。
ええ、これは多分正しい読書の仕方じゃありません。たとえどんな作品であろうと作者が一生懸命に書いたであろう小説を、そういう期待のもとに読んじゃいけないんですよね。

でも、それにしても酷すぎですよ、これ・・・・。

有名な「二人が向かった先は地元で有名なスーパーに足を踏み入れた」に代表される矛盾だらけの文章の数々。
とにかく個性というにはあまりに強烈すぎました。句読点の使い方や、字の文において錯綜する主観。
確かにタイトルはキャッチーだし、装丁もなかなか、さらに全国の佐藤さんを殺せというストーリーも現代ならではといえるかもしれません。
でも、正直これがベストセラーになったかと思うと、暗澹たる気持ちになってしまったのは否定しません。
よっぽど「コズ○ック」の方がまともでしょう。

ただ作者はこれがデビュー作。問題なのはこれを出版した文芸社だと思う。
確かにほとんど自費出版であったというのもあり、どこまで出版社が校正をいれるべきなのかというのが難しいところがあるのかもしれません。
ただ著者インタビューによると、編集者による校正がまったく無かったわけじゃないようです。
それにしてはあまりにも、日本語の文法としておかしいところが多すぎです。
舞城さんのようにあえて文法を崩した方もいらっしゃいますが、あれは文法や表現の基本を理解したうえでの計算された崩しだと思います。
この作品に関してはその個性的な文章が、単なる読みにくさにしか繋がってないと思います。

出版社は本として世に送り出す責任というものを感じて欲しい。
確かに作者の個性を尊重しなければならないと思うが、それと同時にやはり本としてのクオリティを最低限維持する義務はあると思うし、また作家を育てる責任もあると思う。

こんなレベルの作品を出版しても、それは作家にとっても読者にとっても不幸な結果にしかならないと思う。
ちなみにこの作品はよく「バトル・ロワイアル」と較べられますが、「バトル~」の方が百倍きちっとした小説で面白いと思いますよ、ホント^^;


採点  1.0

ちなみに山田さんのHPでこの作品に関するインタビューを見つけました。
以下再録・・・・。

■まずは、山田さんが小説を書き始めたキッカケを教えてください。
      
 実は、僕はそれほど本が好きだったわけではないんです。どちらかと言えば、読書は嫌いでした。本を出版しておいてこんなことを言うと笑われるかもしれませんが、本当なんですよ。
 特に書きたいことがあったわけでもないのに、なぜ小説を書き始めたか。漠然と「将来は想像力を活かせる仕事につきたいな」と思ったことが、キッカケと言えばキッカケでした。僕の中では「想像力を活かすこと」イコール「小説を書くこと」だったんです。こんな動機だから、最初はまったく書けませんでしたね。

■『リアル鬼ごっこ』の完成度の高さからは、書けなかった時があったなんて思えませんね。ということは、「リアル鬼ごっこ」は何作も書いた上での作品ですか?

 いえ、『リアル鬼ごっこ』は、僕にとっては二作目なんです。
 書き始める前は、すべて想像の世界なので思うように進みませんでしたが、処女作に比べればスラスラと書くことが出来ました。「これは今までにないような作品になるかもしれないぞ」とワクワクしながら書いていたから、筆が進んだのかもしれませんね。 


■はい、社内でも評判となりました。やはり自信作だったのですね。

 ええ、ある時、それまでに書きためた作品のストックを読み返した時、やはり『リアル鬼ごっこ』が一番面白いかな、と思いました。だからこそ、どうしても多くの方々読んでいただきたくなって、出版を考えるようになったんです。

■『リアル鬼ごっこ』では、命を狙われている状況、大切な人を次々と失っていく怖さが、迫力たっぷりに描かれていますね。好調な売れ行きに対してはどう思われますか?

 とにかく嬉しいです。自分の作品が書店に並んでいるのを目で見た時は、「すごい!」の一言でした。実際に目で見てもまだ信じられないくらいに(笑)。友達からも「あの本屋にお前の作品があったよ」と言われて、本当に嬉しかったですね。

■「リアル~」の大反響で、生活に何か変化は生じましたか?

 出版業界の方々との出会いが多くなりました。後は特に変わりません。

■文芸社とのやり取りの中で印象に残っていることはありますか? また、文芸社の姿勢はいかがでしたか?

 一番印象に残っているのは、原稿のやり取りをしている時のことですね。主に言葉の使い方や、物語の組み立てについて教えていただいて。いろいろなところを指摘されたことが、とても勉強になりました。ぜひ、今後に活かしたいと思っています。スタッフの方々はとても親切で、何も分からない僕に一から丁寧に教えてくださいましたよ。

■本を出版したいと思っている方に、メッセージをお願い致します。

 自分の本が書店に並んだ姿を見るのは、本当に感動的です。自分の分身ともいうべき作品が世に出て、誰かの評価につながれば、なおさらですよね。それは、大げさに言えば、人生の中の新しい一歩にもつながると思います。
 僕は自分の作品を本にすることが出来て、本当に良かったと思っています。

これはやっぱり文芸社の人がインタビューしたんですかね・・・ハァ・・・。