『大志の歌~童話の学校 校歌・寮歌』 著者:安野光雅

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茨城県筑波山村私立蝦蟇高等学校校歌

蝦蟇の歌

前を流れる櫻川
後ろをは深き筑波山
蓮咲く沼のほとりこそ
わが故郷の誇りなれ

朝露ふくむ車前草(おおばこ)の
群れ咲く下にひそやかに
世の行く末を憂いつつ
わが少年の日は過ぎぬ

痔の妙薬といつわりて
がまの油をこねまわし
あるは刀の刃をとめて
人をあざむく悲しさよ

我に秘めたる誇りあり
鏡の牢を閉ざすとも
己が姿にたわむれて
如何でか汗を流すべき

霞ヶ浦を遠く見て
天に誓いをたてし日の
熱き涙はわが形見
ああ、筑波山わが母校

 

この本に収録されている唱歌(?)の最初の作品である。
もちろん題材としてとられているのは「がまの油売り」。

 

もともと著者が古今亭志ん朝の「がまの油」売りの口上を聞いているうちに空想した学校の唱歌
実にユニークな歌だと思う。
先日「安野光雅美術館」の1コーナーに展示されていた作品、ちなみに校章もちゃんとある(笑)。
この校章がまたいい味を出している。上の表紙画像に載ってますので探してみてください。
いかにも安野さんらしい親しみの持てる構図になってます。

 

この本に、サブタイトルでもわかるように童話や古典から題材を取った架空の学校の校歌・寮歌・応援歌が34篇収録されていて、どの歌も元の題材を生かしつつ非常にユーモラスでついついにやりとした作品ばかり。
ちなみに他にどんな校歌があるかというと、「小川村立 めだか小学校校歌」「里山村立 すずめ小学校校歌」「熊本県仙波山私立 狸化学専門学校校歌」などなど。
名前を聞いただけでもどんな歌か気になりませんか?
そう思ったらぜひこの本を手に取ってみてください。一時の安らぎがおとずれるはずです(笑)。

 

では最後にもう一つ収録作を紹介して記事を終わりたいと思います♪



岩手県立山猫高等学校 花巻寮寮歌

注文の多い料理店

岩手おろしにしばれる尾っぽ
おいらは山猫 手荒な稼ぎ
稼いだ金で 学校へ行くが
校長の賢治が 花巻き上げる

白神岳の道なき道の
おいらの学校を料理店に変えた
そんな山奥誰がくる
おなかすかした密猟者

どうぞお客は 一風呂あびて
裏のお部屋にお通りなされ
身代金は有り金全部
それがなければ骨までしゃぶる

稼いだ金は 学校へお出し
それが嫌なら退学なされ
注文の多い料理店
店長の賢治が もうすぐ来るぞ

(2006.8.31 ブログ再録)