『魔剣天翔』(☆3.7) 著者:森博嗣

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クロバット飛行中の二人乗り航空機。高空に浮ぶその完全密室で起こった殺人。エンジェル・マヌーヴァと呼ばれる宝剣をめぐって、会場を訪れた保呂草と無料招待券につられた阿漕荘の面々は不可思議な事件に巻き込まれてしまう。悲劇の宝剣と最高難度の密室トリックの謎を瀬在丸紅子が鮮やかに触き明かす。

 

はい、Vシリーズの第5弾ですか。
今まで読んだVシリーズの中ではいろんな部分で一番完成度が高いのかなという気がします。

 

飛行中の航空機内で起きた殺人事件。死体は一つ、容疑者は一人。これだけ読んでワクワクします。
このトリックに関しては非常にすっきりしていて分りやすいと思います。これに関しては、森さんの独特の文体がいい意味で効果を挙げている気がしますね。
これ以上書くとネタバレになりそうですが。

 

またこの事件の動機そのものは非常にシンプルである意味森さんらしかなるところもあるのですが、一ひねりあるのは動機の部分が犯人によって語られているのではなくあくまで紅子の推察によって語られている憶測に過ぎないということでしょうか。
そういった意味では動機をそれほど重要視していないという森さんのスタンスがくっきりとでた作品かもしれません。

 

また動機の部分でシンクロしてくるもう一つの問題、宝剣とそれを所有する画家の存在の描き方が、メインの事件と微妙に同構造の上に作られているような気がしますね。そういった部分はもしかしたらVシリーズのもう一つの特徴だと思ったりしないでもありません。

 

それにしても主人公や脇役の重要人物達の人間関係がいよいよ複雑になってきてるような気がするな~。
そういう意味では今までの作品(S&Mシリーズ含む)の中でも一番とっつきやすい作品だと思います、はい。


採点   3.7

(2006.8.31 ブログ再録)