『聖アウスラ修道院の惨劇』

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野尻湖畔にある修道院の塔で起こった2つの密室殺人。満開の桜の枝に、裸で逆さに吊るされた神父の首なし死体。ヨハネ黙示録に見たてた連続殺人。そして、不可解な暗号文も発見されたのだ。神秘の領域で惨劇が繰り返される。名探偵・二階堂蘭子の推理が、ついに暴き出した地下文書庫に隠された驚愕の真実!

amazon紹介より

この小説を読む前に絶対に気をつけなきゃいけないこと、それは『地獄の奇術師』の犯人についてやたら言及してる事です。直接は明記されてないんですけど、この本を読んだ後に『地獄の~』を読むと、話の展開で犯人がバレバレなんですよね~。ちなみに僕はこの間違った読み方をして損をした気分になりました。

さてさてこの小説ですが、この封印された書庫みたいなテーマは『薔薇の名前』以降よく見かけますね。京極さんとかもに似たような趣向の話がありましたし。
この作品もこの書庫の問題が結構事件のポイントになってます。この辺のネタは使い古されてる気もするのですが、この作品の場合は結構うまく構成してるんじゃないかと。
記述や証拠における隠されたもう一つの視点みたいなものが、違和感なく逆転している印象があります。

まあ、この修道院自体が戒律に厳しいのかゆるいのかイマイチ判断に苦しむところがあるし、ドラキュラ伝説の処理の仕方にも少し疑問が。というか、長野県警の人たちってあまりにも単純すぎないかな、これ。蘭子に振り回される姿がいくらなんでもちょっとご都合主義な気もしますね。
トリックそのものも、警察ちょっとは頭使えよって思うぐらい単純。目から鱗っていうほどでもないし。

でも、まあこのオチは嫌いじゃないかも。なんとなく登場人物がショックを受けるのは分かるし、ちょっと同情しちゃうかも。ただなあ~、あそこまでおおがかりに仕掛けを作らなくてもとは思いますけど。

話全体としては好きですね。ただ、注釈がなくなったのは不満です(笑)。

ストーリー  3.5(冒頭からラストまで、そつなくまとまってます。)
プロット  3.0(よくあるパターンなので目新しさはないですが、その中でも割合うまい方だと思う。)
トリック  2.5(これはね~、解けない警察に不信感ですわ。)

総合  3.0