『邪馬台国はどこですか』 著者:鯨 統一郎

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カウンター席だけの地下一階の店に客が三人。三谷敦彦教授と助手の早乙女静香、そして在野の研究家らしき宮田六郎。初顔合わせとなったその日、「ブッダは悟りなんか開いてない」という宮田の爆弾発言を契機に歴史談義が始まった…。回を追うごとに話は熱を帯び、バーテンダーの松永も教科書を読んで予備知識を蓄えつつ、彼らの論戦を心待ちにする。ブッダの悟り、邪馬台国の比定地、聖徳太子の正体、光秀謀叛の動機、明治維新の黒幕、イエスの復活―を俎上に載せ、歴史の常識にコペルニクス的転回を迫る、大胆不敵かつ奇想天外なデビュー作品集。

amazon紹介より

歴史の常識をあっという論理と意外な結論でひっくり返す歴史ミステリー。
とはいっても、ちっとも堅苦しくはないです。
この手の歴史ミステリーは、ときにあまりに専門的になりすぎて、読み物としては重すぎる作品になる事があります。
かの高木彬光の歴史物しかり、松本清張の歴史物しかり・・・。

でも、本作は軽く読み通せる、ちょっとユーモア・ミステリ的風味に仕上がっています。
歴史を検証するのがテーマなだけに、どうしても専門書などからの引用があるのはしょうがありませんが、それも最低限に抑えて、自称“歴史エンターテイナー”宮田と、歴史学者静香の会話の面白さでうまく引っ張ってます。

ここで、繰り広げられる仮説の数々が、どこまで信憑性の高い物かはわかりません。
おそらくは歴史的資料を恣意的に厳選して、仮説を作り上げてるのかなって気がしないでもないのですが、その分深く考えずに楽しめる作品になってると思います。

個人的には『謀反の動機は何ですか』『奇蹟はどのようになされたのですか』が結構気に入りました。
ミステリとしての食いつきは物足りないですが、その分お手軽。
歴史ミステリーに食指が伸びない人でも、本書をそのきっかけにしてもおもしろいかも♪

ストーリー2.5(ユーモアはあるもののちょっと物足りない。)
意外な結末3.5(宮田の仮説は常に奇想天外)
プロット3.0(読み終わったらそれなりの説得力を感じます)

総合  3.0