死者の木霊 著者:内田康夫

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バラバラ死体が発見されたのは、信州の小京都、飯田市郊外の松川ダム。叔父甥間の借金がらみの単純な殺人事件と見た捜査本部は「犯人」の自殺が確認された時点で解散した。だが、この事件の背後に不自然なものを直感した飯田署竹村巡査部長は執拗に事件に喰らいついていく。大型本格社会派のデビュー作。

講談社文庫あらすじより




日本の量産作家の始まり、赤川次郎山村美紗・西村京太郎の3氏だと思いますが、いまやドラマ化される率の無茶苦茶高い量産作家になったのが、「浅見光彦シリーズ」の内田康夫氏ですね。氏のデビュー作でもある今作はシリーズ探偵の一人「信濃コロンボ」竹村巡査部長が主人公です。

量産作家といえば、毎回同じパターンの小説のイメージ(赤川=ユーモア・ミステリー、西村=時刻表、山村=密室)がありますが、僕のイメージとして内田さんは内田=浅見光彦がパターンなのです。つまり、独特の色を持たない感じがするのです。

で、この作品ですが、現実に起こった事件をヒントに氏が構想を膨らませたということで、結構しっかりした出来上がりになっています。竹村巡査部長が少しづつ証拠や証言を集め、真相に辿り着く過程がしっかり書かれていますし、登場人物もわりとそれぞれ丁寧に書かれています。意外な犯人とか、派手なものはわりませんが、デビュー作としては十分な作品だし、今でも氏の代表作の一つといってもいいかもしれません。喰わず嫌いで読まないのはもったいないかも。