『和時計の館の殺人』

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巨大な塔時計の一風変わった文字盤が見守る中、怪事件が連続する!和時計の刻む独特の時間は、事件と関わりなく流れているようでもあり、犯罪に荷担しているようでもあり…。邸内を和時計に埋め尽くされた田舎町の旧家・天知家で、遺言書の公開と相前後して起こる不可能殺人。遺言の内容からは、殺人を起こす動機はうかがえないのだが…。遺言の公開に訪れた弁護士・森江春策が、複雑に絡み合った事件の深層に切り込んでいく。

yahoo紹介より

芦辺さん、今回は横溝正史の『犬神家の一族』にオマージュを捧げられてます。
なんといっても最終章の解決編では、森江春策がセルの着物によれよれの袴、ぼさぼさの髪という金田一耕助ばりの扮装をして真相を語るという徹底ぶり。
事件も、ある旧家で起きた遺言状に纏わる連続殺人ということで、キャラ立ても結構犬神家の構造に似せてる気がするなあ。

じゃあどこまでおもしろいかというと・・・
すいません、よくわかりませんでした。事件を複雑化した背景には旧家に飾られたたくさんの和時計の特殊な表示方法が絡んでくるんですが、その仕組みについての説明が読んでて理解しにくいんです。
解決編では、そのへんを森江さんが結論だけ簡潔に語ってくれたりするので意味は分かるんですが、小説として考えるとそれはまずいんじゃないかと思います。

さらに密室殺人が起きる場面での建物の構造もまた理解できませんでした。
察するに、芦辺さんは読者にイマジネーションを起こさせる情景(恐竜であったり、乱歩ばりの幻想的な殺人風景)はまずまずなんですが、即物的な説明の描写に非常に難があるのではないかという気がします。

その辺がうまく処理されてれば、この作品もネタは面白いと思うのでもう少し読めるものになったのではないかと思うんですけど。
結構初期の作品だとは思うのでそこに目をつぶるにしても、もう少し進歩のきざしがみられてもいいような気がしますね、正直。


総合  2.5