天は赤い河のほとり

イメージ 1



篠原千絵といえばホラー漫画、というのが昔からの印象です。小さい頃から妹が持っていた短編集を暇を見つけては読み漁りました。少しづづ僕も大きくなり、『海の闇 月の影』や『闇のパープルアイ』を読みましたが、やっぱり印象は変わりませんでした。

そんな時、漫画喫茶で見つけたのが『天は赤い河のほとり』。まあ、存在は前から知ってたんですが、僕の持ってる印象と違うので食わず嫌いのまま放っておいたのです。まあ、ほかに読みたい本も無かったのでとりあえず手にとって読み始めると、その面白さに結局全巻読破するまで、漫画喫茶に居座ってしまいました。

あらすじはというと、現代の中学生である夕梨(ゆうり)が、突然過去の世界にタイムスリップしてしまいます。その行き先は、紀元前のトルコ地域にあったヒッタイト帝国。そこで彼女は帝国の後継者の一人、カイル(のちのカイル・ムルシリ2世)の出会い、その后として後の世まで伝わるイシュタルとしてその生涯を送る、その姿を描いた壮大な古代史漫画です。

実際の歴史(といっても、古代遺跡から発掘された資料から推測される伝説の時代ですが)に基づいた歴史漫画というと、どうしても堅くなりがちな作品が多いですが、この作品は史実と漫画ならではのオリジナルの部分のバランスの良さが際立っていて、歴史が嫌いな人でも十分にロマンティックな感傷に浸れます。

まあ、もちろん突っ込みどころはたくさんありますよ。なぜ ヒロインがたったあれだけの出来事で昔の言葉が分かるようになったんだとか、なぜあんなに馬を乗りこなせるのか?などなど。
でも、細かい事はいいのです。古代オリエントを舞台に繰り広げられるロマンティックかつ壮大な叙情詩の世界にどっぷり浸れます。とにかく泣けます。