『マスカレード・ナイト』(☆4.0) 著者:東野圭吾

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若い女性が殺害された不可解な事件。警視庁に届いた一通の密告状。
犯人は、コルテシア東京のカウントダウンパーティに姿を現す!? あのホテルウーマンと刑事のコンビ、再び――。

Amazonより

 東野さんの「マスカレード」シリーズ三作目。短編集の「〜・イヴ」は読んでないのですが、多分問題なかったろうと思います。

 正直前作のストーリーはなんとなくしか覚えてないのですが、刑事ながらホテルマンが似合う男・新田とコンシェルジュに(多分)昇格した山岸さんのキャラは覚えてました。今作は、都内で起きた不審死に対して、警察に「密告者」と名乗る人物から、真犯人がホテル・コルテシア東京のカウントダウン・パーティーに現れるという予告文が届いたところから話がスタートします。
 密告者はなぜ犯人がコルテシア東京に来るのを知っているのか、そもそも犯人を知っているならなぜそれを教えてくれないか。不確定な情報に踊らされながらも再びホテルマンとして潜入する新田。脳内ではキムタク変換です(映画見てないけど)。

 一方、事件操作に協力しながらもコンシェルジュとして様々なお客の無理難題に答える山岸。一方からプロポーズにふさわしいシュチュエーション作りを頼まれたと思ったら、その相手からは傷つかないように断る方法を相談され、警察の勝手な捜査のせいで起きたクレームに対応したりと、実際ここまで対応しないといけなのかと思いますが、「コンシェルジュとして出来ないとは言ってはいけない」という新年のもとに無理難題を解決していくところは、それだけで面白く読めるパートになっていると思います。

 主役の二人だけでなく、他にも印象的な登場人物が。何と言ってもフロントオフィス・アシスタント・マネージャーの氏原さん。警察の潜入捜査に協力するという組織の方針には従うもののフロントに立つ氏原に対してフロント業務を一切させようとしません。最初は嫌味さだけが目立つキャラでしたが、物語が進むにつれフロントマンとしての優秀な観察力、さらには彼のホテルに対する信念がじょじょに明らかになってきて好感度が上がってきます。事件解決後、ホテルに客として訪れた新田刑事を、捜査中まったく見せなかった最高の笑顔で迎えるあたりが実に彼らしいエピソードだと思いました。
 他にもどこまで心が折れないんだ日下部さんだったり、不倫に使うホテルに家族と泊まりに来ることになった曽根さんもどうなのよというよりはなんだか可哀想と思えるキャラも良かったですね。

 さて、今作では事件の舞台になると予告されているカウントダウン・パーティーが仮装パーティーとなっており、ただでさえ仮面を被っているホテルの客が、リアルに仮装をしているということで、前作以上に犯人、あるいは告発者がホテルに現れるかが想像できないし、告発者の行動の矛盾の謎が想像できません。

 それが、犯人の正体が分かってから(犯人のわかる場面の演出もすばらしい)、それまでの密告者の言動や、一見事件と関係ないと思われていたエピソードまでが事件パートの伏線になっていたのにビックリ。犯人の動機に至ってはもう被害者となった女性に同情するしかないというレベルで共感できず。逆に密告者の行動理由の背景もなんだなかと微妙に共感出来ない半面、人間のいやらしい部分を見せてくれてそれはそれでウームと考え込んでしまいました。

 それにしても、新田刑事と山岸さん、お互いにリスペクトしてる部分もあって、周りからみたらお似合いだよとツッコミたくなるし、ラスト直前に将来を予感させるフレーズを入れてるのにも関わらず、そこで終わりかい!!あるかもしれない次回作では、二人の関係は進展するんですかね。



採点  ☆4.0