『絶対正義』(☆3.9) 著者:秋吉理香子

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由美子たち四人には、強烈な同級生がいた。正義だけで動く女・範子だ。彼女の正義感は異常で、法から逸れることを絶対に許さない。由美子たちも、やっと掴んだ夢や恋人との関係、家族までも壊されそうになり…。このままでは人生を滅茶苦茶にされてしまう!追い詰められた四人は範子を殺した。五年後、死んだはずの彼女から一通の招待状が届く!

Amazonより

 うわぁ・・・・これは嫌だな^^;;

 テレビドラマは未見だけれど、設定に惹かれて手に取った自分にとっては三冊目の秋吉さん。個人的にはこれまで読んだ中では一番イヤな感じ。

 どんな些細な罪すら見逃さず、もしその罪を見逃そう人がいるならばその人までまとめて正義の名の下に叩きのめす恐怖の正義モンスター、高規範子。名前の中に「規範」という文字が入っているのが恐ろしい。

 正義を語るのは悪いことではないのでしょうが、文化祭で興味半分でタバコを吸った生徒達を金八的指導で優しく諭した教師に対して容赦なく警察に通報し、事情を斟酌して見逃した警官を告発する。範子は、まるで人情の欠片も感じられないロボットのような存在です。

 そんな彼女と友人にだったが為に、大人になって自分の人生を壊されそうになり、ついには彼女を殺してしまった4人のクラスメイト。そりゃあ、気持ちは分かります。自分が出版したノンフィクションの引用をいちいち確認したり取材に違法性が無かったか勝手に聞いてまわられたり、自分の会社で私物の携帯を充電してたら窃盗と言われたり、最後はそれぞれの立場が崩れそうなところまで追い詰められる姿が4人の視点で描かれます。

 正直、範子が友人たちを告発する手段にしても一歩間違えば犯罪じゃないのかという気がしないでもないのですが、それ以上に範子のキャラが立ちまくっているので友人たち同様こちらも反論が思い浮かびません。

 実際に範子ほど極端ではないにせよ、正義の名の下に断罪する行為そのものに快感を覚える人はいるような気がします。そういう人は、こちらから見ると空気を読めない人ってだけで済む事も多いとは思うのですが、もしかしたら範子の予備軍のようになっている人はいるかもしれませんね。

 4人が範子に追い詰められる姿もそれはそれで空恐ろしくて面白いのですが、ある意味想定内。むしろ、この小説のイヤミスたる所以はやっぱりラストの展開があるからと思います。どこまでも救いではなく絶望しか残らないラストはほんとにイヤ過ぎます。これ以上はネタバレになってしまうので、興味があったらぜひ手にとってみてください。
  それにしても、こんな恐ろしい女性と結婚して子供までもうけてしまう夫っていったい。もしかしたらこの小説で一番謎なのはこの夫かもしれませんね。



採点  ☆3.9