NHKBSプレミアム『悪魔が来りて笛を吹く』

イメージ 1

 NHKBSプレミアム『悪魔が来りて笛を吹く』、みなさん、見ましたか?
 すごいです、大傑作です。同作の映像化ではダントツ、そして金田一の映像化作品の中でもかなり上位です、個人的に。

 今回の金田一耕助吉岡秀隆。BS金田一は短編ドラマを池松壮亮、そして『獄門島』を長谷川博己が演じており、毎回主役の金田一が違うという趣向。短編ドラマの三話目、『百日紅の下にて』の最後で金田一は獄門島に向かい、『獄門島』の最後で東京の等々力警部から「アクマガキタリテフエヲフク タスケコウ トドロキ」という電報が届く。そして今作に繋がってます(どうも最初は続編は念頭に無かったようですが)。

 さて、前作の長谷川博己金田一の『獄門島』。「キ○ガイじゃがしかたがない」という伝説の台詞がそのまま再現されたことに狂喜し、ヒャッハー&オラオラ系金田一が犯人を狂死されるという、NHKらしからぬ尖った演出が強烈にインパクトに残る傑作。特にかつて無い金田一像を作り上げた長谷川博己金田一は続編の希望も多かったと聞きます。

 それにも関わらず、今回は吉岡秀隆の登板。彼の映画デビューが渥美清金田一八つ墓村』だったそうで、彼自身も念願だったよう。白髪のビジュアルに若干戸惑いながらも、そのキャストが発表された時は心が弾みました。

 そんな吉岡金田一が解決するのが『悪魔が来りて笛を吹く』。横溝正史の原作の中でも屈指の後味の悪さを誇る作品。それをどうテレビ放送に耐えれる内容にするのか、というところが不安でしたが、長谷川金田一のスタッフにとってはそんな事は問題じゃありませんでした。出来上がった作品は、原作以上に胸糞悪く、地上波では放送NGレベル。それをBSとはいえNHKがやっちゃったという心意気に感激です。

 そもそも旧華族を舞台にした近親相姦ドロドロ物語が事件の遠因な訳ですが、このドラマ版はそこがさらに強烈に改変されてます。原作では犯人はそれを知っていたから事件を起こしたのですが、ドラマ版では犯人はそれを知らずに別の動機で事件を起こした設定になっており、金田一の推理でそれを知り絶望。その直後に椿子爵婦人である秌子の台詞でさらに絶望、狂気に陥ります。原作の秌子婦人はある意味無邪気な天然で、映画版で演じた鰐淵晴子さんの美貌がその浮世離れした性格にマッチしてましたが、このドラマでは出番がそんなに多くないにも関わらず胸糞度MAX。そりゃあ犯人も狂っちゃう、こんなの地上波じゃ無理だよ!!

 この展開で金田一長谷川博己が演じてたら嬉々として関係者を地獄に落としちゃいそう、間違いなく放送禁止になりそう。そういう意味では吉岡金田一だからギリギリOK・・・だと思う・・・。

 この吉岡金田一、事前インタビューでこれまでで一番しゃべる金田一耕助と言っていましたが、その言葉に偽りなし。なにせ2時間ドラマなのに後半一時間が金田一耕助による解決編という狂気の時間配分。潔いくらい事件パートがサクサクすすむのも、このドラマがトリックで見せるものではなく狂気の動機こそが魅力だということを制作側が分かってるということでしょう。

 正直最初の方は、いつもの吉岡秀隆っぷりに若干の違和感があったのですが、解決編に入るとその朴訥とした味わいが事件の狂気度を倍増させて、このストーリーには長谷川博己はもちろん石坂浩二でも古谷一行でも、映画版で演じた西田敏行でもなく、吉岡秀隆じゃないと駄目という境地に達してました。解決編で犯人を絶望に追い込んだ台詞が、事件解決後にやっと吹かれた笛によって金田一自身に返ってきて、自ら絶望しちゃうそのお姿。綺羅星のごとく居る名探偵の中でも防御率の悪さは屈指といわれる金田一像にピッタリなのかもしれません。

 そしてラストに岡山の磯川警部からかかってきた電話。
 『八つ墓村』キタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!

 もういまから次の金田一が楽しみだぞ!!