『古事記異聞 鬼棲む国、出雲』(☆2.6) 著者:高田崇史

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 日枝山王大学の民俗学研究室に所属する橘樹雅は、研究テーマ「出雲」についての見識のなさを担当教官・御子神伶二に指摘され、現地に旅立つ。
 出雲四大神とは何なのか、伊弉冉尊を偲ぶ「神在祭」とは? 雅が向かう黄泉比良坂では、髪を切られ、左眼に簪を突き立てられた巫女の遺体が発見される。知られざる歴史の真実を描く新シリーズ!



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 でました、高田さん新キャラ歴史ミステリ。QEDも再開してるし、毒草師もあれば、連と響子のシリーズ(?)もあるし、それでも出しますか、歴史ミステリ!?って感じです。

 でも、今回はそれまでのシリーズとはちょっと違います。これまではタタルさんと奈々ちゃんに代表されるように、性別はともかくほぼコンビ物だったのに今回は雅さん一人だけ。
 就職活動に失敗してやむを得ず大学に残った雅さん、研究テーマの「出雲」にしても、研究の傍ら八重垣神社での恋占いをフィールドワークの第一目標にするライトな女性。大学の研究室にはどうみてもタタルさんか毒草師かみたいな高田さん御馴染みのマニアックなキャラがいますが、今回はアドバイスだけです。

 さて、高田さん✕出雲はQEDやカンナでも取り上げられてましたが、それほどに謎が多い場所というべきなんでしょう。確かに従来の学説を覆す出土品、古来の出雲大社巨大説など、色々と謎な部分があります。

 今回の作品、これまでのシリーズを復習しつつ、出雲の謎がさらに深まる展開。そもそも蓮くんと響子さんのシリーズもQEDの復習をしつつ・・な感じですが、あちらに比べると主人公(?)の雅さんは曲がりなりにも大学で専攻しているだけあって、復習のレベルが高い・・・というよりさらっと流して、気になる人は過去の出雲テーマのシリーズ読んでくださいねっ、としか思えないのは私だけでしょうか。

 けど、それ以上にやっかいなのが、この作品、どう読んでも出雲編が完結していない、明らかに続編ありき。私が読み込みが浅いせいなのかわかりませんが、この小説内で明らかになった真実(高田説)がなんだったのか、よくわかりませんでした。
 元々高田さんのベースは井沢元彦さんなどと同様に怨霊史観がベースにある(過去の出雲ネタも「逆説の日本史」などで取り上げられた説が根底にあります)のは明らかだろうと思います。
 この作品でもある程度怨霊史観の知識がないとついていきにくい、あるいは男千木と女千木の違いなどの知識が無いと確実に「何言ってるの?この人達?」と置いてかれる確率が高いです。
 なので、高田さんの歴史ミステリを読んでない人には少々ハードルが高い。読んでる人でもうーむとなりますから(私だけ)

 正直、マンネリ。でも、もしかしたら次の作品でとんでもない真実(高田説)が明らかにされるかもしれない、だから読み続ける。やっぱり単純にファンなんでしょうね・・・。

 え?現代の事件はどうなんだ?高田さんの作品でそれを聞いてはいけません。過去の作品でも、現代の事件なのに動機が異様・・・を通り越して理解不能、それに納得する警察もどうなのよって感じでしたが、今回もそれは変わらず。というよりも、事件の細かいところは説明されずに大枠だけで解決が語られます。いや、もう・・ほんとここまで来ると本気で事件いらなくても読み応えは同じなんじゃあ・・・・。


採点  ☆2.6