『ヘンな論文』(☆3.5) 著者:サンキュータツオ

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最高にムダな知的興奮! 研究者たちの知られざる奮闘をあぶり出す。

珍論文ハンターのサンキュータツオが、人生の貴重な時間の多くを一見無駄な研究に費やしている研究者たちの大まじめな珍論文を、芸人の嗅覚で突っ込みながら解説する、知的エンターテインメント本!

【目次】
はじめに
一本目 「世間話」の研究
二本目 公園の斜面に座る「カップルの観察」
三本目 「浮気男」の頭の中
四本目 「あくび」はなぜうつる?
五本目 「コーヒーカップ」の音の科学
六本目 女子高生と「男子の目」
七本目 「猫の癒し」効果
八本目 「なぞかけ」の法則
九本目 「元近鉄ファン」の生態を探れ
十本目 現役「床山」アンケート
十一本目 「しりとり」はどこまで続く?
十二本目 「おっぱいの揺れ」とブラのずれ
十三本目 「湯たんぽ」異聞
Column.1 論文とはどんなもの?
Column.2 小林茂雄先生訪問記
Column.3 研究には4種類ある
Column.4 塚本浩司先生訪問記
Column.5 画像がヘンな論文たち
Column.6 タイトルの味わい 研究者の矜持
あとがき。

Amazonより

 漫才師兼お笑い芸人兼大学非常勤講師である著者が集めた「ヘンな論文」が紹介されているこの本。全部で13本の論文が紹介されているが、そのどれもが題名を読んだだけで、一癖二癖感じられる物ばかり。
 例えば

・「傾斜面に着座するカップルに求められる他者との距離」
・「男子生徒の出現で女子高生の外見はどう変わったか〜母校・県立女子高校の共学化を目の当たりにして〜」
・「大学祭における「猫カフェ」の効果〜「猫カフェ」体験型のAAE(動物介在教育)が来場者に及ぼす影響〜
・「走行中のブラジャー着用時の乳房振動とずれの特性」

などなど。どうだろう、普段なら読みたいたいとも思わない論文がこれほど読みたくなる事があるだろうか。

 ちなみにいちおう国文学科出身の私も卒業論文を書いている。タイトルははっきりと覚えてない(引っ越しの際紛失してしまった・・・)が確か、「『草の花』における作家的恋愛観〜福永武彦論〜」的な感じだったと思う。内容的には福永武彦の代表作のひとつ『草の花』で描かれる2つの恋愛を通して、作家としての恋愛観を読み解こうという論文だったはず。全部で原稿用紙70枚ぐらいだったと思うが、我ながら出来は良くなかった気がするが、まぁよく見かけるような論文のタイトル名だなぁ、と思うし、このタイトルだけ見て読みたくなるかと言われれば、まぁなかなかそういう気持ちにはさせられないよなぁ。

 実は最初は違う論文を書くつもりだった。それは映画監督である大林宣彦の作品論である。当時大林映画に影響を受けまくり、自主映画も作っていた。とうぜん国文学科だったので、映像作品論なんて筋違いなので、原作付きの映画をよく作っていた事に無理矢理に結びつけて大林映画を語り尽くそうと思っていたのだが、ゼミの教授にあえなく却下された悲しい記憶がある。

 本の話に戻るけれど、タイトルだけ見たらふざけてるのか、という論文達だが内容はいたって真面目。そりゃあ学術誌とはいかなくても、それぞれにきちんと発表されているものだ。発表されているということは、論文としてある程度成立していなくちゃいけないのだろうし、実際にタイトルを紹介した論文もデーター収拾から始まり、推論、仮設の検証と一般的な手順を踏んでいる。実に素晴らしい。

 論文の在り方は、その状況によって千差万別だと思う。たとえば大学の卒論でブラジャーと言われても却下される可能性は高いのだろうけど、媒体やタイミングを選べば論文として発表できる。

 じゃぁ一体論文ってなんなんだ?それは自分が知りたいと思う気持ち、その知りたいという気持ちをみんなに知ってもらいたいという学術的リビドーの表れなのだ!!なんていうのは大袈裟かもしれないけど、他のレビュアーさんも言っている通り、知的欲求の具体化というか、極端なこといえば小学校の自由研究だってある意味論文といえるかもしれないんだよ。

 と少しだけ硬い(そうでもない?)事を言ったかもしれないが、この本についてはそこまで肩を張らないで読んでもらいたい。気軽に読みながら、自分の知的欲求を少しでも肯定できれのであれば、それでいいんじゃないかい。

 

採点  ☆3.5