『卑弥呼の葬祭』(☆2.8) 著者:高田崇史

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邪馬台国、天岩戸、宇佐神宮――古代史の謎が一つに繫がった時、連続殺人の真相が明らかになる。宮崎・高千穂の夜神楽の最中、男性の首なし死体が発見された。大分の宇佐神宮では、御霊水の三つの井戸に、女性の首と両手が――。その折も折、萬願寺響子の従弟・漣が、「邪馬台国卑弥呼の調査に行く」と言い残して行方不明に。続発する怪事件の解決には、日本史の根幹を逆転させる発想が必要だった。長編古代史ミステリー。

Amazonより

 『鬼門の将軍』に続く出版社勤務の萬願寺響子と、その従兄弟であり高校生の漣が主人公のシリーズ(?)第2弾。今回は邪馬台国卑弥呼に天岩戸伝説の謎に迫ります。しかも、今回は講談社の『QEDシリーズ」からまさかのタタルさん出張。新潮社なんだから毒草師さんでも良い気がするんですが、講談社さん太っ腹!!

 今回は神話の舞台で起きた複数の殺人事件と、行方不明になった漣を追って九州上陸を果たした響子のエピソードが並行して描かれてます。
 殺人事件については『QED』シリーズというより、『カンナ』シリーズに近い強烈な動機が印象に残ります。そもそも今の時代にその動機で人を殺しちゃう人なんて、まあいないだろと思わず突っ込みたくなります。そんな動機に「十分ありえることだ」としれっと語るタタルさんもタタルさんですが、それに納得しちゃう他の登場人物どうなのよ!!特に警察、その動機を裁判所で語ったら?マークが飛び交うぞ!!

 高田さんにしては珍しくミステリのある手法を使ってますが(以前使ってたことはありましたが)、動機が動機なので印象に残りません。ミステリ部分と歴史の謎の解明部分が比較的リンクしていないこともない(むしろ近年の『QEDシリーズ』のそれがあまりにアレだからそう思えるだけ?)けれど、それでもそんなに相乗効果を感じなかったのは、やっぱり動機の問題なのか。

 そんなお約束のグダグダ感満載のミステリ部分に対する歴史の謎はどうなのか。
 ベースになるのは、日向・高千穂地方に伝わる天岩戸伝説。ただ、検証の部分においてしばしば「QEDシリーズ」に登場したネタが投入されており、タタルさんが漣の師匠(?)という設定も相まってなんとなく復習をさせられてる感じ。それだけならいいんですが、「QEDシリーズ」でタタルさんが語った真相が詳しい説明もなくさらにサラッと流してくるので、読んでない(あるいは覚えてない)人は推理の前提がわからない所もあるうんじゃないでしょうか?

 古代史ミステリの中でも超難問の一つ、邪馬台国がどこにあったのかという点に関しての推理については、某有名ミステリ作家が提唱した論と同じ(だったと思う)で、それ自体は主流ではないもののけっして意外過ぎる真相ではないと思います。そこに天岩戸神話と天照大神、さらには現天皇家に関する解釈を絡めることによってかなり壮大な推論が広がります。
 タタルさんの推論については、所詮素人の私に詳しい所はわかりませんが、なんとなく成程と思えました。特に天岩戸神話についてタタルさんが指摘した疑問点、あるいは矛盾点については目からウロコでした。ただ、ところどころ説明不足なところがスルーされているのは気になりました。

 まあ、今更いうまでも無く、高田さんの歴史ミステリに共通する取り上げられてる歴史に興味が無いと正直しんどいとうのはこの本も一緒なので、読まれる時はそれを頭に入れて挑戦してみては。

 
 

採点  ☆2.8