『ゴルフ場殺人事件』(☆3.7)  著者:アガサ・クリスティ

イメージ 1

 南米の富豪ルノーが滞在中のフランスで無惨に刺殺された。事件発生前にルノーからの手紙を受け取っていながら悲劇を防げなかったポアロは、プライドをかけて真相解明に挑む。
 一方パリ警視庁からは名刑事ジローが乗り込んできた。たがいを意識し推理の火花を散らす二人だったが、事態は意外な方向に……
新訳決定版。
Amazonより

 デビュー作『スタイルズ荘の怪事件」を読んで、ふむふむポアロはこんな感じなのかな、と自分の中でイメージしての第2作。

 殺人事件を危惧される中で、それを防げなかったポアロが自らの名誉とプライドに掛けて事件に立ち向かっていきます。みんながみんなどこか怪しい登場人物、調査が進む中起きる二つ目の殺人事件、ライバルの刑事との対決。全体として古典的お約束ストーリーながら、わりとテンポよく読ませてくれます。個人的にはスタイルズ荘より読みやすかったですね。

 やたりオシャレな言い回し、でもキザにならないのは髭の形が崩れるのをやたら気にしちゃったりする姿が愛らしいからでしょうか。
 そんなポアロとの名コンビっぷりを見せるヘイスティングス、「スタイルズ荘〜」を読むまでは融通の利かない元軍人という記憶(何故そう思っていたかは自分でももう忘れました)だったのが、こんなにお茶女で美人に弱いのかと。前作でも速攻プロポーズをかましてくれましたが、今回もシンデレラにメロメロ。
 あまりにもメロメロなんで、事件よりもそっちの行方の方が気になったり。そんなヘイスティングスに恋のアドバイスをするポアロの方が、事件の鋭く解決する姿より印象に残ります。

 一方、肝心の事件はというと、きちんとストーリーもあってどんでん返しもあって、ちゃんとミステリしてるにも関わらず、印象が薄い。しばらくすると誰が犯人だったけとなりそう。
 その原因はなんだろう、と考えてみるとポアロの推理の材料を調理する発想が前時代的な事があったりなんかするのかな。とりあえず、背中を刺されているから女性の仕業と言ってみたり、遺伝学の信奉者だったり、犯人を確定する4つの理由が案外とムチャクチャだったり(特に三番目)と、今の時代に書かれたとするとバカミス扱いを受けそうなネタが散見。

 まあ、そんなトホホな事を大真面目に検証する姿はなんとも愛らしいし、浮かれ気分のヘイスティングス君の灰色の脳細胞をなんとか活性化しようとするポアロの優しい指導者っぷりも微笑ましい。
 ストーリーのテンポや、ミステリの王道として試みてることについては「スタイルズ荘〜」と較べても悪くはないと思うんですけど、そのテンポの良さがメインよりもサブのストーリーを引き立たせてしまった感があるのは残念。
 でも、個人的には嫌いじゃないです、この作品。しかしなぜタイトルがゴルフ場殺人事件(原題ママ)なんだろう。いや舞台としてはなってるけど、全く印象に残らないのですが、、、



採点  ☆3.7