『ペンギンを愛した容疑者』(☆3.9) 著者:大倉崇裕

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まずはあらすじ。

 「人間の視点では、この謎は解けません」
ペンギン屋敷の溺死体! 秘められた”殺意の証拠”をアニマル推理で解き明かせ! 警視庁「いきものがかり」の名(迷)コンビが大活躍!!
 強面の窓際警部補・須藤友三(すどう・ともぞう)と動物オタクの女性巡査・薄圭子(うすき・けいこ)の名コンビが、動物にまつわるさまざまな難事件を解決する、大人気「コミカル・アニマル・ミステリー」シリーズです。
 登場する動物はペンギン、ヤギ、サル、そして最も賢い鳥と言われるヨウム(オウムではないことに注目!)です。
警視庁の「いきものがかり」というべき、総務部動植物管理係のコンビの活躍を楽しめる4つの短編を収録した傑作集です。 

Amazon紹介より

 大倉さんの動植物管理課シリーズ(?)第3弾。前作の『蜂に魅かれた~』の感想に、長編よりも短編の方が・・・という感想を書いたんですが、今作は再び短編集に戻りました。須藤さんと薄ちゃんの掛け合いのテンポも、長編だと若干ウザい感が出て来る気がするんですが、短編だといい感じにリセット(?)されるので、読んでて楽しいです。
 3作目ともなると二人の呼吸もピッタリあってきたというか、薄ちゃんのボケに対する須藤さんの返しに愛情が感じられるというか、でも薄ちゃんの日本語ボケも、天然なのか狙ってるのか分からんようなところもあって、そこがまた小悪魔的というか(笑)。



「ペンギンを愛した容疑者」

 個人的にペンギン大好きです。心の癒やしです。先日の連休時にペンギンを見に行こうと思ったら水族館が休みだったのに大変ショックを受けたぐらい好きです。ちなみに部屋にはペンギンのぬいぐるみがあります、そして・・・
 おっと、そんな私の好みはおいといて、かんたんな粗筋。ペンギンを自宅で飼っている資産家が死体で発見される。事故か他殺か、怪しすぎる容疑者達の中に犯人はいるのか。。。

 ミステリとしては、まぁツッコミどころが無くは無いですが(ある物品の隠し場所とか)、世界観は楽しい。毎日ペンギンが見れるなんて、でも餌やりは結構怪我もしやすいんだな、いやぁ将来的に勉強になるなあ・・・。

「ヤギを愛した容疑者」

 殺人事件の被害者だけでなく、容疑者も意識不明の重体。残されたのはただ容疑者が飼っていたヤギのみ。もうひとつの小学校での答案バラマキ事件は、殺人事件に関係があるのか。。。

 読み終わってみると、メインの殺人事件よりも答案バラマキ事件の方が強烈に印象が残ったというか、バラマキ事件そのものは想像通り、けれどもメインの殺人事件とを繋げる犯人の動機部分の後味の悪さといったら。最初読み始めたときこういう方向の話になるとは誰も予想できなかったんじゃ。。。それにしてもヤギの習性についても知らんことはいっぱいあるなぁ。。

「サルを愛した容疑者」

 リスザルを飼っていた男の部屋で発見された死体。事件を依頼していたのは容疑者として勾留されていた男だった。果たして事件の真相は、リスザルは何を見たのか。。。

 事件もそうですが、オープニングで語られる薄ちゃんの今後について何やら怪しい雲行きに。彼女の今後を心配しつつも事件を追いかける須藤さんの姿はもはや保護者を通り越して父親ですな。事件そのものも収録作の中では一番本格要素が強いかな。猿の習性をうまく利用しているし、ラストで真相が反転されることで犯人の人間性をしっかり浮かび上がらせるところも秀逸。今作の中では一番いいかな。薄ちゃんの未来もいい感じに収まって一安心^^

「最も賢い鳥」

 ヨウムを飼っていた被害者。元々の飼い主とのトラブルが浮上するが、果たして事件の真相は。
 収録作の中では一番コンパクト。ヨウム(オウムとの違いはよくわからず^^;;)の習性、事件の展開も短さに合わせて無駄がないぶん、シリーズとしての面白さも少し足りないかな~。


 このシリーズはやっぱりミステリ部分の精度を堪能するというよりも、動植物に関する薄ちゃんの博識ぶりと須藤さんとのボケツッコミを楽しむものだなというのを再確認しました。ネタ的に厳しくなっていくかもしれませんが、この二人のコンビはもう少し読みたいな~。あと、大倉さんは「季刊落語」のシリーズの続編をずっと待ってるんですが。。。
 



採点  ☆3.9