『QED 伊勢の曙光』(☆4.0) 著者:高田崇史

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まずはあらすじ。

日本の歴史の虚構を暴く、「QED」シリーズ、ここに完結!

伊勢の鄙(ひな)びた村から秘宝の鮑(あわび)真珠を持参していた神職が、不審な墜落死を遂げる。事件解決へ協力を頼まれた桑原崇(くらばらたかし)は、棚旗奈々とともに伊勢へ。しかし、二人を待ち受けていたのはシリーズ中最大の危機だった。果たして崇は、事件の真相と、日本史上最大の深秘(じんぴ)「伊勢神宮の謎」を解けるのか?

Amazon用あらすじより

 いよいよ、QEDシリーズ本編完結編。今回のテーマは伊勢神宮。日本の神社の総本山が満を持しての登場。登場人物も主要キャラがほぼ登場。物語がいきなり奈々の妹、沙織ちゃんが結婚するところから。ああ、小松崎・・・ぜったい沙織ちゃんと結婚すると思ってたのになぁ・・いや、でも前作に出てきた小松崎の子供「大地くん」はもしかして・・・あ、シリーズ的に一部の作品を除いて大きなリンクは無いけれども、登場人物的に前作を読んでた方がわかりやすいかもしれない。

 架空の神社の秘宝を巡る殺人事件をキッカケに、いつものメンバーが伊勢を訪れる事になります。この事件そのものは、作者の語る伊勢に隠された謎とリンクしてる訳ですが、いくら歴史の恩讐に囚われてるとはいえ、現代日本でこの動機ですか・・いや、この動機を描くならもうその部分だけにスポットを当てた小説にしないとリアリティが、という気がしますが、このシリーズにそれを求めてもというのは、多分読者がみんな思ってるような気がします。

 歴史の謎の方については、わりとシンプルで面白い。いつもの「たたら」やら「蛙」やらは登場しますが、今回はもっと大きな括りとして「神宮」を扱っており、伊勢神宮を巡る不可解な点についても作中で箇条書きにされているので、ホウホウと思えます。でも解決編では箇条書きごとに回答を提示しているわけでないので、読み返しが必要かもしれません^^;;斬新な解釈という訳でもないタタルの推理だとは思いますが、既存の色々な説(特に「天照」の正体について)を取り込みながらのタタル(作者)の推測は、個人的には説得力を感じました。

 この何年かで2回(遷宮の前後)ほど伊勢神宮に参拝させていただいた際も、Kindleにこれを入れて旅の途中再読しながら行ったので、参拝するのにちょっと参考になりました(やっぱりガイド本???)。内宮参拝の時は、宿舎が行う早朝参拝ツアーに参加、朝6時過ぎに出発するので、人も少なく、内宮の神聖な空気(なんだか空気の密度が違う・・)を堪能しながら結構コアな解説を聞き、外宮でも観光ボランティアをお願いし色々な薀蓄を聞きながら、面白く参拝しました。
 他にも伊勢神宮の別宮巡りや、二見興玉神社にも足を伸ばしたのもこの小説を先に読んでたからだろうと思いますが、ホウホウと巡ることができました。ううむ、やっぱりQED恐るべし。そういえば熊野三山を巡ったときもやっぱりこのシリーズを持っていったな。。。

 さて、シリーズ最後ということで気になるのはあの二人の行方、タタルさんと奈々ちゃんです。実はこの作品、事件を追っていく中で二人にシリーズ中最大のピンチが訪れます。迫り来る危機に先に逃げろというタタル、一緒にいるという奈々。そこでタタルが取った行動・・・おお!!ついに!!胸アツです!!
 そして事件が全て終わり、解散というところで登場人物の一人がタタルさんに言った「あなたはもっと大切な事に気付いてないのではないのですか?」と問われた事に対してタタルさんが出した回答、一体ラスト「カル・デ・サック」に向かう道の途中(そういえばシリーズの始まりもこのバーでしたねぇ)、タタルは奈々ちゃんに何を言ったのか(読者には伏せられてます)、

くぅ!!

 色々賛否もあるようなこのシリーズですが、締めくくりは綺麗だったと思うし、読み通せてよかったなという点数をつけました。とりあえず恋愛物としてシリーズを追っかけているあなた、これは読まないといけませんぜ^^




採点  ☆4.0